犬の胆嚢粘液嚢腫の破裂 [News]
●Dax 12歳 あん ♀
主訴は二日前からの嘔吐と食欲不振でした。
身体検査では、肥満、乳腺腫瘍、乳汁分泌、陰部腫脹、結膜充血、黄疸、著しい歯石などがありました。
血液検査では、著しい黄疸、肝酵素の上昇、白血球増加、電解質異常、重度の脱水が引っ掛かり、膵炎、肝−胆道系疾患を調べるために超音波検査を行いした。
まずは、輸液で脱水を矯正した後に急ぎ開腹手術と決めました。
●破裂した胆嚢と粘液嚢腫
開腹するとまずは濃い血様の腹水とコーヒーゼリー状の破片が目に飛び込みました。超音波検査と腹水の検査から、この状況を想定していましたが、粘液嚢腫の破裂をこの瞬間に確信しました。そして、胆嚢の部位をのぞくと、多くの出血をと胆嚢の形をしたコーヒーゼリーの塊を認めました。破裂した胆嚢と肝臓の付着部を剥離して、総胆管の開通を確認して摘出しました。
そして、徹底的に腹腔内を洗浄し、ドレインを装着して終了しました。
●胆嚢早期摘出の勧め
胆嚢粘液嚢腫が進行すると今回の様な破裂を起こし、胆汁性腹膜炎を発生してしまいます。胆汁性腹膜炎を発生すると生存率が一気に低下します。
超音波検査の段階で胆嚢粘液嚢腫を認めたならば早期に摘出することを是非とも思います。早期であれば全身状態は良好で、命がけで摘出することはありませんので・・・・。
”キューイを見つけたら早期に収穫を、コーヒーゼリーは見たくない!”
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犬の皮膚型リンパ腫 [News]
●べべ ♀ 15歳 ビーグル
半年前から口の中が赤く、食べるのが遅いとの主訴でした。確かに歯石沈着の程度に比べて、歯肉、粘膜の炎症が顕著であることを認めました。他には、皮膚と肛門の潰瘍状病変も認めました。
●皮膚病変
●組織検査
早速、口腔粘膜と皮膚の組織検査を行いました。結果は共にリンパ腫でした。「皮膚型リンパ腫」とは、皮膚にできるリンパ腫ですが、口腔粘膜タイプが皮膚タイプと比較して生存期間が4倍あると言われます。残念ながらべべは、皮膚にも粘膜にもリンパ腫が存在しました。
●治療
皮膚型リンパ腫の治療は抗癌剤を使用するのが通例ですが、飼い主さんの希望はできるだけ抗癌剤を使用したくないとのことで、免疫増強療法を選択されました。確かに抗癌剤の全身投与は、腫瘍を叩きつつも、自己も同様に傷つける方法です。理想は、腫瘍組織のみをピンポイントで攻撃できれば良いのですが・・・いつもながら全身性に広がる腫瘍では、難しい選択を迫られることになります。
犬の肺高血圧、自己免疫性溶血性貧血、アレルギー性皮膚疾患 [News]
●シーズー ♂ 12歳
この度は、心臓の検査のために来院されました。心臓の検査は、素早くストレスなく行うために、通常は鎮静剤を使用させていただきます。(リラックスできる場合は不要です)まずは、鎮静剤の使用に先立って血液検査をさせていただきました。すると、中程度の貧血があることが分かり、溶血を伴っていて続く尿検査でも溶血が確認されました。
●肺高血圧症と左右心不全
5年前から収縮期性雑音が聞かれ、精密検査を毎年の様にお勧めしていましたが、今回ようやく検査をしていただけることになりました。結果は、重度の左右心不全でした。左の心臓の悪化から始まり右の心臓までその影響を及ぼす(肺高血圧症)に至っていました。このまま放置すれば循環不全による肺水腫が早い段階でくることになります。これからは、真剣に観察(咳、失神、運動不耐性)を行っていいただくことをお願いしたいと思います。
●自己免疫性溶血性貧血
貧血の原因は、自己免疫性溶血性貧血でした。この病気は自己の赤血球を自分で破壊してしまう疾患です。その他の出血の原因を除外して、赤血球の大小不同、再生像、分断赤血球(血液が壊れている様子)から診断に至りました。
●アレルギー性皮膚疾患
掻痒の発症時期、季節性からアトピー性皮膚炎と仮診断しましたが、現段階は、まず心臓と溶血性貧血を落ち着かせてから治療に入りたいと思います。
●その後
貧血は、PCV27%が36%に増加してきました。飼い主さんの感想も、「元気になって咳も少なくなった」です。
中年(7歳)を超えると、人間の40歳ぐらいになりますので、色々と問題の発生が始まり、さまざまな病気が複合して発生することも多くなります。
*PCVとは?:血液を細胞成分と血漿成分に分離して赤血球の量を測定する方法です。