猫の口内炎とアレルギー [News]
●チャー 8歳以上 ♀ 三毛
「歯が痛そうで、クチャクチャする」主訴で来院されました。
その他の稟告は、時として食事中に「ギャー」と鳴く、ヨダレが少し、おとなしすぎるでした。
私は口内炎の治療にステロイドを使用しません。
過去の記事にも詳細を記載していますので参考にしてください、以下少々。
ステロイドは、「天使の顔をした悪魔」、炎症を抑制しますが、そのステロイド自身がその後に組織で過酸化脂質に変化し再び炎症を引き起こします。そして、炎症が再燃してステロイドを延々と切り離すことができなくなります、「ステロイド漬け」「蟻地獄」状態に陥ります。
これが悪魔の所以です。
●術前
口峡炎、口蓋扁桃部に潰瘍病変がありました。
喉の入り口に炎症があるので、想像以上に痛みがあり辛いと思います。
※写真がありませんが、この増殖病変は、炭酸ガスレーザーで処置しました。
●左側
上下の歯肉炎、歯の接触する口唇部に著しい炎症が見られました。
●正面
上顎の切歯(前歯)に炎症が見られます。
●右側
下顎の後臼歯部分にも増殖病変が見られます。
●術後 右側
炎症が著しいため、歯周靭帯が破壊され抜歯は容易でしたが、歯の根(根尖)を残すと炎症が持続するので、細心の注意が必要です。時には歯槽骨を高速バーで削りながら抜歯を進めます。
●正面
上顎切歯も全て抜歯しました。
●術後 左側
犬歯(一番大きな歯)は炎症の影響が少ないので、歯石を除去してスケーリング(清浄)、そしてポリッシング(磨き)を行い温存することにしました。
●まとめ
手術後炎症を軽減するために漢方薬を5日間ほど処方しました。食欲は、3日間はありませんでしたが、4日目から徐々に回復しています。
慢性口内炎は、多くの例でアレルギーとの関連があります。よって、食事管理は必須条件になります。理想的には減感作療法を行って抗原刺激を無くし炎症の発生を抑えることが一押しです!(現在、飼い主さん検討中、約15回の生体共鳴療法が必要)
減感作療法
http://www.ishizaki-ah.jp/admin.php?ID=1214
●13日後
暫くは、食事が進みませんでしたが、痛みの軽減によりしっかりと食べるようになりました。ヨダレもなくなり、併せて処方食も変更できました、めでたしめでたし。
●2カ月後
食欲正常、ヨダレなし、調子良し。13日後と比較すると歯肉の赤みが軽減していました。
本日は、残存する4本の犬歯に付着する歯石と歯垢を除去し、歯磨きを行いました。
●歯ブラシ
病院では穏やかで素直に歯磨きをさせました。
自宅でも歯磨きを行っていただけることでしたので、歯ブラシを出しました。
今後のチェックは、3か月ごとを目安に行います。
肛門嚢の破裂 [News]
●エンジェル ♀ キャバリア 13歳
「突然、身体をくの字にして歩く、歩くときにキャンキャン鳴いて痛そう?」と来院されました。身体検査を行うと右肛門嚢の破裂が見つかりました。
肛門嚢とは?
犬、猫の肛門周囲に存在する分泌腺の袋のことです。
犬にも猫にも存在しますが、時に感染、閉塞による破裂が生じます。
●肛門嚢の感染、破裂
肛門嚢は解剖学的に肛門(黄色⇒)を12時として4時と8時方向の位置する分泌物を溜める袋です。
今回は、右側の袋が破裂し、内容物が漏れ出している状態でした。
●治療
局所麻酔を施し、破裂した部位を少し切開して内部を洗浄しました。
病気としては、通常の感染症(化膿)と同じ扱いで、分泌物の排除を行えば速やかに治癒します。時に感染創が下方にあれば、麻酔処置によりドレインチューブの設置が必要になります。
●予防
定期的に肛門嚢を絞り溜まりすぎを防ぎます。
分泌物が溜まるスピードは、個々に異なるため個体に合わせた予防的な処置が必要になります。
指で肛門嚢を確認し、袋の状態に合わせて優しく絞る必要があり、慣れていない飼い主さんが行うと溜まっていないのに「出ない、出ない」と握りすぎて組織を痛めてしまうことがあるので注意が必要です。時には、肛門から指を挿入して絞らないといけないケースがあります。
歯科治療にレントゲン撮影が必須の訳 [News]
●歯科治療
当院での歯科治療の手順は以下です。
@歯垢、歯石除去と消毒
*通常超音波スケーラーを使用します。
Aレントゲン撮影
*全ての歯のレントゲンを撮影します。
B探子などを使い歯・歯肉の状態検査
*ポケット、歯肉、動揺、エナメル、露髄の観察を行います。
C抜歯、歯肉フラップ、修復
D消毒、洗浄、写真撮影
●レントゲン撮影その1
歯を支える骨(歯槽骨)の吸収、および歯茎が後退し歯根が露出していることが分かります。
このケースの歯肉の後退は肉眼で観察できる事項ですが、以下は異なります。
●レントゲン撮影その2
歯根部に感染(根尖部)が発見されました。
外観は歯茎も健在、動きもなく、エナメルの状態も至って綺麗ですが、レントゲンを撮影すると歯の根の部分における感染(黄色⇒)が疑われる所見が見られます。
ということで、歯の治療にはレントゲン撮影は不可欠で、予後、治療方針にとって重要な位置づけとなります。