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2009年06月06日(土)
犬の耳道摘出術 [News]
今回は、遭遇する機会の多い、難治性慢性外耳炎のお話です。
慢性外耳炎の基本原因は、多くがアレルギーです。このアレルギーが上手くコントロールされないと、今回の様に進行して、手術適応になります。
●柴犬
3年前から症状がみられ、外耳炎を繰り返していました。ここ数か月、管理が不十分になり、急に進行。「体質故、治療手段はない。」と言われ、当院に来院されました。
耳介には、増殖した組織が充満し、耳道(耳穴)を閉鎖しています。耳鏡が入り込む余地は、ありません。
●耳介下の皮膚を切開し、耳下腺に注意し剥離を進めます。
顔面神経を慎重に保護しながら、深部の鼓室(鼓膜のさらに奥の部屋)まで進みます。
鼓室内に増殖した耳道組織と耳垢を綺麗にそぎ取ります。その際に、細菌培養の組織を検査に送ります。次に、鼓室下部の骨を除去し、最後に消毒、洗浄を行いました。
●手術法は、@垂直耳道切除術A水平耳道切除術B全耳道切除術(鼓室切開術)とあります。今回は、レントゲンで確認したとおり、鼓室は綺麗でした。
しかし、増殖した耳道組織が鼓膜を破り、水平耳道の増殖が著しかったので、全耳道切除術を選択しました。
●耳介の増殖組織を切除したところです。
最初の写真との違いが明らかに分かります。
●耳は、入口から耳介、垂直耳道、水平耳道、鼓膜、鼓室の順で構成されています。
下記は、切除した水平耳道です。
水平耳道も、増殖した組織で満たされていました。
●手術終了後です。
耳道はすべて除去しましたが、外観の違和感はありません。
●思うこと・・・
できることならば、この外科手術に進むまえに症状をコントロールしたいものです。多くは、陰陽食事療法、脂肪酸、抗ヒスタミン剤、シャンプー療法などで可能です。
しかし、残念にもこの様な状況に陥った場合には、積極的な手術を早期に行い、ずるずると抗生物質と変更しながら症状を引きずることは避けたいものです。耳を取る手術となると多くの飼い主さんが躊躇されますが、上記の様に術後の外観の変化は、ほとんどみられません。なにより、いらいらした毎日から解放され、快適な日々を送れるようになることが何よりだと思います。
そして、今回の様に、持病と諦めず、ご相談ください。
●病理検査報告
昨日、病理検査報告書が届きました。
炎症性ポリープで、悪性所見はありませんでした。
本日、抜糸も終わり、後は耳介部の炎症が治まるのを待つのみです。
これで、長い苦しみから解放です、お疲れ様でした!
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21時02分