選択されているタグ :
猫の呼吸困難2(うっ血性心不全) [News]
●ハッチ 19歳 ♂ シャム
「食欲があるが、息が荒い!?」と来院されました。胸部のレントゲン撮影を行うと、大量の胸水を疑う所見があり、超音波検査では、心臓の左と右の弁の著しい逆流が観察されました。先ずは、胸からの材料採取の為に胸腔穿刺を行いました。
●胸部レントゲン
レントゲンでは、肺は空気を含むために黒く映るのですが、液体は反対に白く映ります。肺が虚脱し約3割しか空気を含んでない様子が観察されました。
●超音波検査
胸腔内の胸水貯留と共に心臓の左右の弁における、著しい逆流が観察されました。
●胸水
胸腔内カテーテルを留置し、胸水を抜きました。そして、その胸水を分析し(細胞診、培養)て原因の特定を行います。胸水は、約350ml抜けました。
●排液直後の写真
概ね肺が膨らみ、黒く空気を含んだ領域が広がりました。
●診断
胸水は、変性漏出液で乳びでした。乳びが貯留する原因には、腫瘍、乳び胸、肺様捻転、心不全が上がります。今回は、両心不全による静水圧の上昇により、胸水がたまったのでした。さっそく、心臓薬を処方すると約8日で胸水貯留が止まりました。
●飼い主さんへの注意事項
飼い主さんは、高齢になり異常を生じると、なんでもかんでも歳を理由に老衰にしてしまう傾向にあります。今回のハッチは19歳でしたので、呼吸が重いのを数か月前から確認しているにもかかわらず、食欲があるので歳による変化だからしょうがないと思っていたそうです。いつも繰り返しお話しすることですが、歳を重ねても呼吸が悪くなることはなく、ほとんどが年齢とは関係の無い異常が生じていることを肝に命じて、早く来院していただきたいと思います。おかしいと感じたなら「人間ならどうだろう?」と置き換えて考えて欲しいものです。