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会陰尿道瘻形成術と慢性膀胱炎 [News]
●アイ 6歳 ♂ Mix
再々にわたり尿道閉塞を繰り返し、カテーテルでの排尿処置を何度も行い、いよいよ尿が出なくなってしまい獣医さんの紹介で来院されました。完全な尿閉塞ではなく、絞り出すように尿が出ていたため尿毒症は免れていました。問題としたのは、慢性の膀胱炎でした。それは、過去に様々な抗生物質を使っている情報から耐性菌の心配がよぎったのでした。
●尿道瘻形成術
矢印の部分で閉塞が著しく、カテーテルが全く挿入できない状態でした。よって、尿道を見つけるのに随分と苦労しました、切断したペニスを骨盤部に固定するため、尿道部分が癒着し線維化して堅くなったペニスの一部を残さざるを得ない手技となりました。
●術後の様子
去勢手術とペニスを切断して包皮粘膜を利用して膣を形成しました。
●術後14日目
ご紹介の先生からは、術後に尿と陰部から排膿があり、随分と心配され何度もご連絡がありました。「培養結果がでるまで焦らず消毒に徹してください!」とお伝えしました。
7日後の培養結果は@大腸菌Aエンテロコッカスの2菌種が見つかりました。予測通りほとんどの抗生剤が効きません、@とAに効果があると思われる2種類の抗生剤を個々に選択し、7日間の併用療法を行うことをお伝えました。
抗生剤の使用が始まった7日後には、膿はまったく見られなくなり、耐性を得た細菌を無事に制御することができました。(下記が感染が治まった陰部のアップ写真)
●考察
抗生剤は「錦の御旗のごとく」使われますが、使わないに越したことはありません。最も問題になるのは耐性菌の出現であり、不適切な使用で人為的に発生を招きます。当院の方針は、出来るだけ抗生剤を使わない、そして使う際には、使う明確な理由があり、的確な抗生剤と的確な投与量と的確な投与期間を計画して投与しなければならないことを肝に銘じることです。漫然となんとなく習慣的に使用すると耐性菌が出現して難治性の感染症を発生させてしまうことを認識して使用する責任があります。
今や人類の生存にかかわる大きな問題まで発展しています、使用者の公衆衛生上の高い意識が必須です。
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猫の尿閉(血餅閉塞) [News]
●ツキ ♂ 日本猫 4歳
猫の下部尿路疾患は、順に@突発性膀胱炎A尿石症B尿道栓子C尿路感染症があります。3番目の栓子の原因は、尿道に結晶(主にストルバイト)が閉塞することで尿が排出されなり。この状態を尿閉と呼び、時間経過により尿毒症を発生します。
通常の栓子形成は、ストルバイト(マグネシウムとCaの結晶)ですが、ツキちゃんの場合は、閉塞物の内容が血餅*でした。
*血餅とは?
血液中のフィブリン(繊維素)が血球と絡み合って沈殿したもの。
この血餅の原因は、どこかに出血があるために発生します。一番に考えられることは、膀胱炎による力みにより膀胱粘膜に圧がかかり亀裂が生じ出血が生じてしまうことが考えられます。
栓子を除去時、ECOで膀胱内の大きな血餅を確認しました。繰り返し閉塞する場合には膀胱切開による止血、会陰尿道瘻形成術を検討しましたが、幸いにも翌日に大きな塊が排出され、それ以降は止血剤により安定しています。
また、7日後のエコーでもたくさん存在した血餅が見られなくなりました。
このケースでは、通常のストルバイト溶解食および予防食は効果がありません。
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犬の陰嚢前部尿道瘻設置術 [News]
●ロン ♂ 四国犬 14歳
そもそも、瀕死の状態で担ぎこまれました。著しい脱水、虚脱、皮膚にはたくさんの蛆が発生して、命の灯火がまさに消えようとしている状態でした。安楽死の選択肢もよぎりましたが、飼い主さんのできるだけのことをして欲しいとの希望で看護が始まりました。横たわった状態故に、数時間おきに体位の変更を行い、床ずれに細心の注意を払い看護士による毎日の手厚い看護により徐々に回復が見られました。その甲斐あり、1ヶ月もするとヨタヨタながらも歩行可能になりました。
●新たな問題点
入院中の検査で発見された一つに、尿閉状態に陥ることが分かりました。ペニスの先端から6p程の所に狭窄部位があり、自力での排尿が僅かしかなく、放置すると尿閉を起こしてしまうことが発見されました。狭窄の原因は、以前に膀胱結石が閉塞した経験があるようでした。内科的にアプローチを試みましたが、どうしても上手く排尿できず、膀胱炎が続きます。
●手術
止む無く、手術で閉塞尿道を回避して尿の排泄を導くことにしました。翌日より無事に自力排尿が可能になり、順調な経過をたどっています。切開部からの出血は暫く続きます。