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毎年定番の蛆の皮膚炎 [News]
幸太郎 W.コーギー ♂ 6歳
●随分と疲れた顔をしています。久しぶりに幸太郎を見ましたが、すっかり衰弱していました。脱水がで動けなくなっていたようです。
●腫れ上がったお尻
冬毛が残ったところに尿がしみ込んでしまったようです。そこにハエが産卵して、たくさんの蛆が発生してしまいました。肛門周囲は、本人の口が届かないところですので、余計に進行してしまったようです。
●蛆の穿孔創
小さく見える穴は、蛆により開けられたものです。蛆が皮膚組織を食べながら穴を掘り進むので、痛みは相当のものです。肛門からも沢山の蛆が発見されました。
●蛆の寄生
確保した蛆は、約300匹!夏場になり、特に寝たきりの犬には、蛆が湧くことがしばしばあります。毛をかき分けて観察し、尿が付着した場所は綺麗に洗い流し、毛を短く刈り取り管理してください。
●すやすやと・・。
処置後は、痛みがなくなり、いままで寝ることができなかったのでしょうか、「すやすや」と寝入ってしまいました。
蛆の皮膚病は熱射病と並んで夏の定番ですが、老齢犬で泌尿器に問題がある場合には、特に注意が必要です。ボケて泣き叫んでいると思っていたら、実は蛆が湧いていたというケースもよくあります。
夏場は、特に衛生管理に気をつけましょう!
猫の下顎骨部分切除と形成 [News]
●猫 10歳 ♀ ハナ
食欲、元気はあるが3か月前から「よだれ」が出るとのことで来院されました。
●腫大した顎
顎が固くなり、反対の顎と比較すると5倍ほどに大きく腫れあがっています。年齢的に口腔内腫瘍も疑わなければなりません。
●口腔内の粘膜欠損
口の中の粘膜の欠損もみられ、露出している骨は見るからに汚く変化しています。口の中に緑色の石様に見えるのが、汚くなった骨が露出してるところです。上の写真の穴の原因は、口腔内に生じた粘膜欠損により感染が起こり、上から下へ通じる穴が形成されてしまったのでした。
●レントゲン撮影
レントゲンは、歯科専用レントゲン装置を使用します。デジタルなので結果はすぐに目の前のモニターへ写し出されるので便利です。今回は、歯と骨の状況を把握しますが、他には埋没歯、歯根の感染、歯髄療法の進行状況を検査するためになくてはならに機材です。
右顎と比較すると大きく肥大し、骨組織がスカスカになった状況が観察されます。しかし、骨の強度は維持されていたので、腫瘍ではない可能性に期待したいと思います。
●骨の炎症
今回は検査を行うために、口腔粘膜を剥がし、上記の骨の一部を病理検査へ出しました。
数日後の結果は、腫瘍性の変化は無く「骨の炎症」でした。飼い主さんと話を詰めてから、後日下顎の部分切除を行う予定にしました。
●下顎部分切除
まずは、骨組織を培養検査へ提出する材料を採取する手順を進めました。骨が腐った部分(腐骨と呼ぶ)を正常の骨と分離して採取しました。
●フラップ形成術
今回の大きな穴を埋めるのには苦労しました。舌側の口腔粘膜は伸びないために使用できないため、頬側の犬歯、第3前臼歯を抜歯し、唇を広げて精一杯の大きさのフラップを作成しました。、
大きく膨らんだ骨を削除して、さらに唇に空いた板穴を塞ぎました。つまり、舌の直ぐ内側に唇が付いている形になりました。
●培養結果
骨の培養結果は、緑膿菌と大腸菌でした。現在処方している抗生物質では不十分なことが分かりましたので、これより変更して長期に投薬いただきます。
●まとめ
飼い主さんと言うものは
「本格的な症状がでないと、来院および手術されないもの」です。
もっと早く手術をしていれば、骨の感染も無く、ここまで大がかりな手術にならなかったと思うと残念ですが、これもいつものことです。この度、フラップ形成の為に数本の歯を失いましたが、これからは、顎が痛むこともなく、よだれも止まるはずです。ハナの快適な未来に乾杯!
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犬の化膿性胆管肝炎か?胆嚢炎か? [News]
●ダックスフンド 11歳 ♂
他の病院で肝臓が悪いと思うが診断は良くわからない。紹介するが急に手術になるかも知れないと聞き、不安になって広島から来院されました。
突然の発熱、黄疸ですからIMHA(自己免疫性溶血性貧血)もリストに上げなければなりません。
症状は、突発でした。身体検査で分かるほどの黄疸がありました。黄疸と言っても大きく考えて肝細胞が障害を受ける場合、肝臓外の胆道系が障害を受ける場合とがあります。ちなみに肝臓および肝外疾患の鑑別リストは、慢性肝炎、中毒性肝炎、ウイルス性肝炎、胆管肝炎、銅関連性肝炎、肝膿瘍、肝硬変、肝腫瘍、バイスタンダー肝炎、全身性疾患の2次的肝臓徴候、門脈シャント、門脈低形成、膵炎、膵膿瘍、胆嚢炎、胆嚢粘液嚢腫、外傷、胆嚢を巻き込む横隔膜ヘルニア、十二指腸炎、寄生虫など多数あります。
●膵炎
犬の場合には、解剖学的な構造上、膵炎から総胆管が閉鎖されて黄疸になることが良くあります。また、ヨークシャテリア、ミニチュアシュナウザーの犬種では、高脂肪血症が危険因子と考えられていますが、今回のケース脂肪に関する数値は正常で、典型的な嘔吐、上腹部の痛み、超音波所見による膵臓のエコー原性の低下はありません。しかし、炎症マーカーであるCRP(炎症蛋白)の著しい上昇は見られます。膵炎の診断率の高い膵リパーゼ免疫活性を検査提出しました。この検査、残念ながら院内でできないので、少し時間がかかるのが問題です。
●胆嚢炎
嘔吐、発熱、黄疸があることから胆嚢炎もリストアップしました。超音波所見は、多くの胆泥はありますが、特徴的な壁の肥厚、内膜が不正、胆嚢内のガスなどはありません。胆嚢穿刺により、胆汁を培養に出すことは診断価値が高いのですが、夜遅い診察でしたので、観察が疎かになることから明日とし、胆嚢炎時に予想される抗生剤を処方し、持続点滴、入院とさせていただきました。
●入院翌日
腹腔鏡による検査を予定していましたが、翌日から熱が下がり嘔吐もありません。膵炎の結果もまだ数日かかるので、現行の治療を継続することにしました。
本日、急性膵炎の検査結果が陰性で届きました。状況は改善され、黄疸の値も正常に近いところまできました。胆嚢炎、化膿性胆管肝炎を最終的に絞れませんが、これより抗生剤を最低6週間投与します。
明日は退院です!