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2018年11月07日(水)
猫の十二指腸異物と慢性嘔吐について [News]
●リアン チンチラ 8歳 ♀
「昨日から食欲が突然亡くなり、嘔吐をしている」主訴で来院されました。
とてもおとなしい子のため、活力は不明ですが、
軽度の脱水と体温低下が見られました。
また、血液のスクリーニング検査では、急性腎不全が発見されました。
そして、触診で大きな胃を感じたので超音波検査へ進みました。
●超音波所見
液体が溜まり大きく拡張した胃の異常所見が見られます。
液体で拡張した十二指腸とその後方に異物らしき像(影を引く)が見られます。
●手術
開腹すると直ぐに十二指腸部分に閉塞部を発見しました。
何とか頑張って1pほど移動した様子がうかがえます(腸の充血部分)
●切開、閉鎖
腸管へのダメージが軽微だったために、異物の真上を最小切開し取り出しました。内容物がお腹に入らないようにして、切開創を縦縫合しました。
●摘出異物
摘出された異物は「梅干し」でした。
術後飼い主さんにご連絡すると、
「そういえば、よくゴミ箱をあさっているんです!」と。
●考察(猫の慢性嘔吐について)
少し前から、慢性嘔吐の病歴をうかがい、周波数測定の結果から食事アレルギーの存在をお伝えしていました。「猫は毛玉を吐くもの、だから草を定期的に与えなければならない常識」が世間には浸透していますが、実は毛玉ごときを消化できない胃は異常な状態が発生しているのです。
通常なら骨をも溶かす胃液がある訳ですから、毛玉が溶かされ消化されないのはおかしいことなのです。炎症を起こして機能が十分でないために消化、収縮、蠕動が通常とおりに機能できない異常な状態にあるために毛玉が滞ってしまうのです。
そして、その炎症と毛玉のために、いつも胃腸が重苦しくすっきりしないので、草を食べては嘔吐を促したり、ゴミ箱から色々な物をあさったりする異常行動を起こしてしまうのです。
異物を食べる元の元は胃腸の炎症から来る異常症状で想像されるのです。
猫は当たり前に嘔吐するものととらえず、草を与える前に異常所見と認識して、一度チェックに来院ください。適切な食事選びを行います。
また、根本治療としての減感作療法も選択でき、数カ月後には色々な食事を頂けるように体質を改善することも可能です。
慢性的に憂鬱な胃腸障害をすっきりとさせて、快適な日々が早く送れますように。
07時19分