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2010年08月09日(月)
1隻のフィラリア虫体の影響 [News]
●フィラリア症
フィラリアとは蚊が媒介する寄生虫の事です。フィラリアの成虫は、犬の肺動脈へ寄生します。そのフィラリアが移動して右側の心臓の弁につまることを大静脈症候群と呼びます。突然血液が壊れ出し急速に症状が悪化します。時間経過とともに救命率が低下します。下は、フィラリアの成虫数匹です。メスが約20cmオスはその半分以下のサイズです。
●ナオ ラブラドル 15歳メス
平成17年の検査でフィラリア陽性でした。その後予防をお勧めしていたのですが、飼い主さんが船乗りの為、家をほとんど留守にするため予防を忘れられていたようです。
この度、食欲、元気が無いと来院されました。フィラリアの急性症状である心雑音・溶血・黄疸は見られません。しかし、フィラリア未予防、貧血と軽度の腹水より、フィラリア症を疑ってまずは、超音波検査を行うことにしました。幸い、おとなしい子でしたので、じっくりと時間をかけて、超音波ビームの角度を微妙に変えて映像を見ると「いたどー!」一隻(一匹とは言わない)のフィラリアと思われる小さな点を発見しました!
●腹水
軽度の腹水の存在がありました。
フィラアは肺動脈に寄生します。その結果、心臓からの逆圧が肝臓にかかり、その障害により腹水が溜まります。腹水が溜まりだすと、かなり慢性で重度です。フィラリア寄生による影響かどうか検討が必要です。
●手術
フィラリアの急性閉塞時の救命処置は、頚静脈から心臓に向けて長い鉗子を挿入し虫を摘出することです。時間経過とともに症状が進みますので、一刻の有余もありません。ということで、緊急手術に入りました。手術時間は、通常15分程度で終わる手術ですが、今回は、虫一隻にてこずり約30分要しました。
●術後
術後翌日から食欲が出ました。しかし、十分とはいえません。術後10日目には、食欲も増加し、腹水も減ってきました。退院後の姿は、別人のように15歳とは思えないはしゃぎぷりです。せっかく助かった命です。油断をせずに、これからは予防を心がけて、さらに長生きしましょう!
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15時49分