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2011年11月10日(木)
痛みの少ない子宮内膜症の手術 [News]
●稟告
14歳 Mix ♀ ラン
「尿を何回もする。食欲にムラがある。」との主訴で来院されました。血液検査では、異常なし。陰部より透明なオリモノと陰部腫大がありました。心臓の雑音は中程度。以前、来院時に心臓の検査をお勧めしていますが来られていません。今回、詳細な超音波検査(腹部、胸部)をお勧めしましたが、鎮静に抵抗感(もし何かあったら・・・・)があるため、予約をキャンセルされました。
●超音波検査
その後、7日間経過しましたが改善の兆しなく、ついに食欲がなくなってしまいました。飼い主さんには依然鎮静の抵抗感があるため、鎮静なしで子宮だけを観察させていただきました。結果は明らかに子宮の異常があることが分かりました。麻酔が心配でしょうがない飼い主さんを説得し、翌日手術をさせていただくことにしました。
麻酔前の鎮静で、胸部レントゲン、胸部超音波検査で心臓の状態を把握してから麻酔に入りました。この映像は、左心室の拡張能力を見ているところです。他に収縮力、逆流、左心房の大きさ、心筋の厚さを観察します。
●腹腔鏡手術
年齢と痛みを加味して腹腔鏡で手術をさせていただくことにしました。通常の腹腔鏡を使用した不妊手術と手技は変わりませんが、卵巣、子宮が大きくなっていると靭帯と卵巣動静脈にかぶさり切断が難しくなります。また、切開創はその大きさに合わたギリギリの追加切開が必要になります。
●子宮摘出
腹腔鏡で手術したため、痛みが少なく当日帰宅できました。
摘出した子宮は、内膜の変性が著しくあるのみで感染はありませんでした。私の経験では、この程度の状態で食欲が全くなくなることはありません。血液検査でも炎症像はありませんでした。果たして、この手術だけで元気になるものかと少し心配になりましたが、3日後には食欲は70%、元気は90%に改善されました。
●乳腺腫瘍同時摘出
5ヶ所の乳腺腫瘍が発見されたので、同時に切除することにしました。ホルモンの影響を受ける乳腺腫瘍の発生予防効果は、初回発情前で不妊手術を行うと99.5%。1回目発情後92%。2回目発情後74%。2.5歳以降は予防効果なし。と言われています。
早期に手術を行えば乳腺腫瘍の抑制され、この度の卵巣、子宮異常につながらず、手術代の負担も少なっていました。
病理検査結果は、悪性と良性でした。いずれも切除範囲は完全で、これで一安心です。
”早期に痛みの少ない腹腔鏡で不妊手術を行い、安心した老後を!”
●抜糸
本日、抜糸を行いました(5mm×2、1.5cm×1の3か所)。すこぶる元気になり、飼い主さんも大喜びでした。飼い主さん曰く「もっと早く麻酔をかければよかった・・・・。」これで、麻酔の抵抗感もずいぶんと和らいだそうです。目出度し、めでたし。
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21時39分