News
2012年11月24日(土)
犬の急性膵炎 [News]
●キララ、♂、12歳、シーズー
主訴は「10日前から吐く、3日前からは水を少し飲むだけ」でした。
拝見した際には、著しい脱水のため起立することができませんでした。飼い主さんは「もう、歳だから死ぬんじゃないか???」と思い込み、来院が遅れたそうです。
●超音波検査の意義
消化器症状があるので、超音波検査を積極的にお勧めしました。最近は、超音波検査器の解像度が進化して、いままで見にくかった臓器も見えるようになってきました。また、超音波検査では、レントゲンで見えない臓器の詳細を観察することが可能です。嘔吐と言っても膵炎を含めて肝臓疾患、腸閉塞、腹腔内腫瘍などを除外するために腹腔内臓器全てを決まった手順に従って全域に渡り検査することで病気が絞れることがしばしばあります。超音波検査は、侵襲が殆どなく簡単にできる検査ですので聴診器を当てる感覚で検査させていただければ診断追及に大いに役立ちます。
●膵臓右脚
昔の機材では、膵臓を見ることができませんでしたが、技術の進化により解像度が飛躍的に亢進しました。膵臓は十二指腸の下に付着し右と左に分かれています。膵臓が腫大し、低エコー性(黒)がまばらに見えるのが炎症を生じている所見と言えます。
●膵臓左脚
肝臓に入る門脈の上に、膵臓の左葉が見えます。これは明らかな異常で、通常は明瞭に確認することができず、もし確認できたとしてもこんな腫大はありません。
●コルゲートサイン
膵炎、腸炎などがあると特徴的な皺状の像が見られます。
上がその皺のある十二指腸で、左下は胃です。
●腎盂拡張
腎臓を見ると、色の変化と腎盂の拡張が見られました。腎盂腎炎の可能性も疑い、尿検査を行いました。
●腎臓の血行
腎臓の色が高いエコー性(白)なので血行状態をチェックしました。今回は、十分な血行がありますが、慢性腎不全の末期では、血行も乏しくなることがしばしばあります。
●副腎腫大
副腎は大きく腫大していました。正常が7mm以下ですが、キララの副腎は10mmを越えていました。副腎皮質機能亢進症について精査していかなければなりませんが、膵炎の危険因子の一つにこの副腎皮質機能亢進症が挙げられています。
●治療
急性膵炎と仮診断し治療を開始しました。翌日の血液検査報告で膵特異リパーゼの上昇がみられたので、超音波所見と合わせて急性膵炎と診断しました。嘔吐を積極的に止めて、できるだけ早く食事を食べさせることが重要になります。5日間の集中治療で起立して吠え、そして、自力で水が飲めるまでに回復しましたが、まだ食べる気はおきません。今日は麻酔をかけて強制給餌用チューブを装着する予定です。
11時20分