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2015年02月05日(木)
猫の膿瘍と抗生剤について [News]
●かよちゃん 猫 6歳 ♂
「足を引きずる」主訴で来院されました。脱水が著しく、左の前肢が大きく腫れて、化膿していることが直ぐに分かりました。点滴を2日間行い、状態を改善して切開、排膿を行う計画をたてました。
●膿瘍
膿瘍とは、細菌感染を生じ、袋状に膿が溜まる状態を言います。猫の喧嘩には膿瘍は付き物ですが、久しぶりの激しいものでした。
洗浄処置を進めると筋肉の一部が溶けているのが分かりました。筋肉欠損による機能障害は残らないと思いますが、その激しかった喧嘩の状況が想像されます。神経に影響がなければよいのですが・・・・?
●処置後
壊死した皮膚を除去し、排液チューブを装着しました。
術後の抗生物質による処置は、当院では通常使用しません。今回のケースの様に著しい膿瘍でも、排液ルートが確実に確保されれば、膿は重力に従って排出されます。理油は、以下に述べますが、全身感染でないかぎり抗生剤の使用は控えるべきだと考えているからです。
●抗生剤の副作用
日本は世界で一番抗生剤の使用量(人)が多く、安易に抗生剤が繁用されています、しかし、副作用はそれはそれは恐ろしいものが記載されていのをご存知でしょうか?ちなみに、古典的なセフェム系の添付文書には、@ショック、アナフィラキシーA急性腎不全B溶血性貧血C偽膜性大腸炎D中毒性表皮壊死融解症,皮膚粘膜眼症候群E間質性肺炎などが挙げられています。
我々は、本当に必要な時に、本当に必要な種類の抗生剤を短期間(3〜7日)のみ使用しなければなりません。また、薬をもらわないと不安がる飼い主さんは、上記の副作用を十分に認識し、耐性菌(漫然と使用することにより抗生剤が効かなくなる菌が出現すること)が出現すること。つまり、バンコマイシンしか効かない耐性ブドウ球菌(MRSA)、さらには最近ではバンコマイシンも効かないバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)が出現しています。我々の未来を見据えて安易に使用することは避けて欲しいと切に思います。
●その後
切開処置後10日目の写真です。しっかりと足を着けるようになり、食欲も旺盛です。来週には帰れるかな?
08時37分