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凝固障害と腸閉塞と腎炎 [News]
●凝固障害とは?
血液凝固に問題が生じ血が止まらなくなる状態(紫斑、点状出血、血腫、皮下出血)を言います。
その凝固にかかわるのは、血小板数、血小板機能、凝固因子、ビタミンンK、血管です。
凝固因子とは、血液凝固にかかわるタンパク質です。様々な因子がありますがこれが不足すると、血腫、皮下出血などが起こります。当院では、麻酔前に凝固時間を測定しますので、その際に異常がみっかったり、上記の症状が存在したときには同様の検査を行います。
●ジュン3歳♂ 猫
4月初めに発熱があるので解熱剤と点滴をしてもらい少しは良くなったそうです。その後、食事を余り食べない。食べた後は嘔吐を繰り返すとのことで当院に来院されました。
●身体検査
かなり痩せていましたので、長期の食欲不振があることがわかります。腹部の触診では、一部塊があり腸管が拡張している部分もわかります。皮膚をみると、所々に皮下出血が見つかりました。
●血液、レントゲン、超音波検査
血液検査では、腎機能の異常。レントゲン写真では、腸閉塞の特徴的なニーボーライン、超音波検査では、閉塞を思わせる腸管内の内容物の停留、腸管の構造異常が見つかりました。
●凝固因子障害
凝固検査を行うとAPTTに異常が見つかり、内因系の因子の障害(8,9,10,11因子)が浮かび上がってきました。さらに、原因を追究するために特殊検査へ進みました。
●手術
点滴を続けること数日嘔吐が止まり調子が良い感じです。
血液量増加、皮下出血が減少してきため、再度凝固系の検査を行いました。超音波検査では、閉塞を疑う所見が継続しています。凝固時間は正常に復していたので、輸血の準備をして凝固因子同定を待たずして思いきって開腹を行いました。
予想通り、腸の一部に狭窄が見つかり、その上部は腸管が拡大していました。
●切除、縫合
まずは腹水が目につきました。低たんぱくではないので、腫瘍か閉塞などによる漏出が考えられます。
予想通りの狭窄部位を縫合し、縫合部位を強化の為にお腹の中の網をつかって覆いました。切除後直ぐの細胞診では、一番い疑っていたリンパ腫でないことが分かりました。
●腎臓生検
超音波で気になっていた腫大した腎臓の検査を合わせて行いました。下側に見えるのがバイオプシーガンです。腎臓に差し込んで皮質の部分を採取し、腸管と一緒に病理検査へ送りました。
●狭窄した空腸
部分的に内腔が狭くなっている腸管です。この狭窄で狭窄前方の12指腸は約1.5倍に拡張していました。入院してから嘔吐が少なかったのは、多少なりともこの狭窄部位から後方へ流れていたと思われます。
●手術翌日
翌日には、元気もりもりでゲージから飛び出してきそうな勢いでした。この瞬間が、
術者として嬉しい瞬間です。点滴は食事療法が始まる明日までもう一日続けます。今後、凝固因子と病理検査結果を踏まえながらジュンちゃんの行く末を考えていきたいと思います。「良い結果でありますように。」
●病理検査
閉塞した腸管は、消化管遺物による腸管壁の損傷が最も考えられ、腎臓は、増殖性糸球体腎炎の初期病変ではないかとの報告でした。凝固因子は兄弟共に異常はなし。無事に退院できましたが、今回の出血の原因がつかめなかったことは残念でした。
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尿検査のおきて [News]
●尿検査について
皮膚の膿瘍で検査をするとよく遭遇する状況ですが、膀胱炎でも白血球が菌を食べている所見を見かけることがあります。当然、ここで抗生物質を使用しますが、その前に無菌処置を施し、膀胱に直接針を刺して検査用の尿を採取します。
そして、まずは、グラム染色と菌の形態から選択した古いタイプの抗生剤を投与して、約七日後の培養結果を待ちます。
気を付けなければいけないのは、闇雲に抗生剤を乱用することであり、使用するのであればルールに乗っ取って使用しなければなりません。患者さんにしてはいけないこは、不適切な使用による耐性菌の出現です。
ということで、めんどくさい検査を繰り返したり、直接膀胱に針を刺して尿を採取することをご理解くだされば幸いです。
有難う・・・・しんチャン。 [News]
●しんちゃん 14歳 ダックス ♂
ずいぶんとホームドクターで治療されていたそうですが、耳にできた大きな腫瘍から出血が止まらないと来院されました。卵大の腫瘍ができた耳もさることながら、検査を進めるとお腹に大きな腫瘍があることが分りました。耳の腫瘍からの出血が多く、そこからの失血を防ぎ、血液量が上がってきたところでお腹の腫瘍を切除することを勧めました。
●手術準備
血液量は上がってきたのですが、最近、食欲が落ち、尿も漏らす、呼吸も荒い気がするとのことでした。飼い主さんは、手術を何時するべきか悩まれました。しかし、これから状況が悪くなれば今しかチャンスがないとの判断で、手術を踏み切られました。状態が悪いのは分っていました、大きな手術になるので、点滴は3本のルートから薬剤がそれぞれ投与され手術が始まりました。
山の様に膨れ上がったお腹です。最近急に大きくなったと言われます。開ける前から、簡単ではないことが感じられます。
●手術
さあ、大変な手術は承知でしたが、思った以上に大きな塊でした。長期間存在していたために色々な臓器と癒着が見られました。約3時間後、残りの大動脈と大静脈の癒着を剥がせば終了するところでしたが、どうしても壁の薄い大静脈が剥がすことができません。無理に剥がせば直ぐに死亡してしまいます。ここで、手術室から一度離れ、飼い主さんと相談をしました。手術を中止してお腹を閉じ痛みに耐えた後、数日間生きるのが良いのか、痛みのないままこのまま楽にしてあげるのが良いのか?
●安らかに・・・・。
数年も前から耳が悪く、お腹の腫瘍も気づかずに今日まできてしまったことは、今更悔いても仕方がありません、しんちゃんの今後を十分考慮して、飼い主さんは楽にすることを選択されました。食欲が落ち、呼吸が早いのは、大きくなりすぎた腫瘍の圧迫だったと思います。また、尿をもらすのも腫瘍に絡んだ尿管の影響が考えられます。お腹の腫瘍は、お腹の中に残っていた睾丸の腫瘍化でした。早期に、また癒着前に手術ができていれば、至極簡単なことだっただけに悔やまれます。今回は、飼い主さんのこれ以上辛い姿を見たくないという思いと本人の状況を考慮しての選択でした。「しんちゃん今まで有難う。」