猫の眼瞼内反症 [News]
●タロー、猫、1歳 ♂
涙が出て、目が腫れている主訴で来院されました。
数か月前に角膜潰瘍から眼内感染を起こし、両目を失っていました。
●内反症
今回は、下の眼瞼が内側に入り込み、その刺激で結膜が充血と浮腫を起こしていました。このケースは、上記の通り角膜穿孔から眼球内感染が起こり、其の後、眼球が萎縮したため、今回の内反症に繋がったと考えられます。下の写真の、赤くなっている下瞼が目の中に巻きこまれていた部分です。
●眼瞼縫合
眼球を大きくすることはできないので、下瞼を一部切開、除去する予定しました。しかし、手術前日に風邪を引いてしまったため延期となり、炎症が進行したので後日応急処置を施しました。
●手術
応急処置後、炎症が消褪したのをみはからって、手術を行いました。まずは、消毒後、内反の程度を確認しました。
術後の出来上がりをイメージしながら、下の瞼と外の眼角を切除して縫合しました。
手術が終了したところです。内反が矯正されているのが分かりますか?
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猫の耳疥癬症 [News]
●耳疥癬症
「耳をしきりに振る、耳から黒い垢出る、耳を怪我している」などの主訴で来院されることが多い耳疥癬症は、耳道に耳ヒゼンダニが寄生することで発生します。
●大量の耳垢
茶色く大量の耳垢が採取されました。集中して見つめると小さな白い点(ダニ)が動いているのが分かります。
●顕微鏡観察
上記の状態を観察できれば、ほぼ間違いがありませんが、顕微鏡で確認するとダニの成虫が見られます。
●治療
治療は、ダニを殺虫する薬と、耳垢洗浄、抗炎症療法で速やかに治癒しますが、他に飼育猫が居る場合には、同時に殺虫管理をしなければ、再感染してしまいます。時に痒みによる掻き壊しで皮膚に損傷が及び大きな穴が開いてしまうこともあります。
下は耳介と耳道が壊死してしまった今までで一番酷かったケースです。
●自宅での観察
耳を振るなどの上記の症状があれば、耳の中を覗いて見てください。さすれば、今回のケースの様な酷い状態は避けることができます。
普段から自宅での「定期的な観察が我が子を救う」ことを忘れないでください!
犬の肛門脇の小さな腫瘤 [News]
●グレイハウンド、♀、6歳、
6ヶ月前に肛門腺が破裂した経験があり、再び破裂したとの主訴で来院されました。「肛門腺破裂」とは、4時と8時方向に位置する袋が感染を生じ破れてしまう状態を言います。今回、場所は肛門腺の開口部周辺でしたが、実は5mm程の円形の硬い塊ができているのが分かりました。
●細胞診
切除前の細胞診(針で吸引して細胞を検査すること)では、有糸分裂を伴った組織球腫を疑いました。
●切除の原則!
腫瘤を切除する際には、完全切除が理想であり、それを目指して切開、切除を行います。切除後は、病理検査で完全切除がなされているか診断を下し、不十分であれば再切開が必要になります。
この際にレーザー、凍結、電気メスを使用して切除することも可能ですが、蒸散などしてしまうと、切除範囲が不鮮明になるのでメスによる切開切除を行っています。
また、腫瘍の種類(肥満細胞腫)によっては、切除範囲を大きく変更する必要があるので、切開前に針を刺して細胞診(良性、悪性の判断、但し病理検査程の確実性はない)を行う必要があります。また、同じ様な腫瘍でも異なる種類の可能性があるので、同じ様に細胞診を行います。時間を要しますが省けない作業です。
飼い主さんは、小さいから簡単に取れば良いと思いがちですが、切除前の細胞診、切除、切除後の病理検査など、色々な過程があることをご理解いただければ嬉しく思います。