広島県呉市「石崎動物病院」

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猫の膵炎 [院長ブログ]

●猫の膵炎
猫の膵炎は、犬の様な特徴所見がなく診断がむづかしいと言われます。原因は、トキソプラズマ、FIP、カリシウイルス、脂肪異栄養症、FeLV、外傷などで、症状は、元気消失、食欲不振、脱水、特徴的な所見は低体温があり、時々、多飲多尿、嘔吐、下痢が見られます。

●フー 5歳 雌(不妊手術済)

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2、3日前からどうも様子がおかしい。フラフラして食欲、元気がないという主訴で来院されました。体温41.2度。血液検査では、白血球増多。そして、感染を疑う中毒性所見があります。まずは、抗生剤を処方しました。
その晩、鰹節を少したべたが、その後、変わらず食欲元気なく、発熱が続くと翌日に再来院されました。再度、血液検査をすると黄疸所見が見られ、昨日より強い感染を疑う血液像が現れました。そこで、超音波検査を行いました。

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●超音波検査
膵臓を観察すると、通常、膵臓は観察されないのですが、膵臓壊死とおもわれる膵臓の低エコー像を認めました。膵臓の超音波検査は、感受性の低さ(67%)から診断をつけにくいのですが、腫瘍、リンパ節過形成、門脈高血圧、低アルブミン症による浮腫を除外することで特異性が高まります。それらを考察し膵炎の可能性を疑い、早速その日の午後から、腹腔鏡による膵臓組織検査を計画しました。                                  

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●膵臓生検
浮腫をともなった膵臓が見られます。腸間膜リンパ節も腫脹していました。左の鉗子で十二指腸を摘み上げ、右の生検鉗子で膵臓を部分切除しました。超音波でも確認済みの僅かな腹水が観察されました。

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●肝臓生検
同じく肝臓各葉を観察し、数か所を部分切除して検査へ送りました。上記および右の主義は、5mmの穴3か所で行っていますので、負担は極めて少なくなります。

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●食道チューブ
食欲がない主訴と術後の食欲不振を考慮して、麻酔時に一緒に食道にカテーテルを装着しました。このチューブから栄養を補給し、食欲が回復するのを待ちます。

●病理結果
膵臓は、膵炎と診断され、外分泌の変性、委縮が観察され、一部で炎症細胞浸潤が観察されました。肝臓は、肝細胞の変性が観察され、炎症細胞も散見される状態でした。

10日後には、熱も下がり顔つきも良く調子が良い感じです。血液検査では、炎症像もなくなっていました。そして、徐々に口から物を少しずつ食べるようになって順調な回復です。
めでたし、めでたし。

   


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アメリカの専門医 [院長コラム]

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●アメリカの友人
アメリカには、専門医制度があります。それは、それは、専門医になるためには、大変な努力が必要です。写真の彼はアメリカの獣医外科専門医のChrisです。彼のスタイルは、自分の病院は持たず開業医から依頼を受けて、各病院を巡りながら外科および整形外科症例を引き受ける仕事をしています。日本でのセミナーで知り合って以来、彼とのご縁をいただきました。過去2回彼の元を訪問していますが、依頼病院を一緒に回りながらアメリカの数件の開業医を見学させてもらったり、手術を手伝わせてもらいました。2回目は同じく外科専門医を持つ奥様が務める病院に滞在させてもらい、外科だけでなく内科症例を数多く見せていただき、貴重な経験をいただきました。オフには、ウエイクボード、レストラン巡り(特に寿司がおいしかったのには、吃驚、職人さんも日本人でさらに吃驚しました)が楽しかったな〜。

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●手術準備室
この準備室を中心にして手術室が2つあります。素晴らしく訓練された看護師が忙しく手術の準備を次から次へとこなします。そして、術後しばらくは、皆の眼が行き届くこの部屋で
犬、猫とマットの上にタオルをかけられ、並んで仲良く寝かされます。その中に、病院で飼われている猫が一緒に紛れ込んで寝ている姿はとても可愛いのです。

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●壁のアルバム
スタッフの働くスペースの一角に伝言板を見つけました。メモや、看護士の子供達、可愛い動物達であふれていました。私も名刺を貼り付けてきました〜♪

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●Good job !
この写真は、つい最近彼から送られてきたもので、(かなり遅い!)3年前に大型犬の十字靱帯断裂を一緒に手術した時のものです。既に手術が無事に終わったところですので安心してください! Toshi

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気管切開 [院長ブログ]

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●ミー子 9歳 日本猫
慢性腎不全の投薬、栄養補給のために、食道チューブを入れて順調な経過をたどっていたミー子でしたが、最近、食事をチューブから入れる時に嘔吐があるという訴えがありました。レントゲン写真を撮ると喉に白い塊がみえるではありませんか!

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●喉周囲の石灰沈着???
喉に白く見えるものが分かりますか?石灰(カルシウム)あるいは膿と思われる物が沈着して、喉の周囲を圧迫しているのが見えます。最近、吐き気があるとの訴えは、慢性腎不全の影響ではなく、これが原因だったようです。表面の粘膜をレーザーで切開し、沈着物を摘出および掻き出すことにしました。

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●摘出物
喉の周辺から摘出された塊です。これから病理検査と細菌培養に提出し結果を待ちます。細胞診では、細菌の関与は認めませんでした。どうしてこんなものが喉の周辺に出現してしまったのでしょうか???

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●気管切開
上記のとおり気道の入口の手術を行ったために、そして、術後の喉の腫れが暫く続くことが予想されるために、気管にチューブを挿入して呼吸を確保しました。翌日から、定期的に気管洗浄を行う必要があります。術後は、ずいぶんと気分が良さそうになり、面会にこられた飼い主さんをズーと舐めまわしてご機嫌満点でした。

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●胃チューブ
今まで、食道チューブで維持していましたが、今回の気管切開のために、チューブを食道に残しておくことができず、胃へ移設することにしました。胃チューブは、食道チューブと比較するとチューブ口径が大きい分、より大きな塊で投与できます。また、長期管理に適します。食道チューブ装着時間が約5分、胃チューブは内視鏡を使用しますので約10分と、少し時間を要します。

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3つのタイプの胃チューブ

多くの飼い主さんはチューブ法をお勧めすると「チューブを入れるのは可愛そう」と返事が返ってきます。しかし、私の15年/数百例のの経験からすると、ほとんどの場合においてチューブ法を選択した方が、回復を助けます。チューブが入っていても口から食べることもできるので(しっかり食べるようになれば、いつでもチューブを抜けば良い)自宅での管理も難しくありません。病気に打ち勝つには、栄養は不可欠です。ですから、私はチューブ法が大好きです、また、必要な手段だと思っています!飼い主の皆さん!チューブ法を恐れず、是非気軽に利用してください。(院長)

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●再レントゲン
再び喉のレントゲン撮影を行いました。最初のレントゲンと比較すると良くなっているのが分かりますが、白い沈着物が消失しています。

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●チューブ抜管
喉に留置していた気管チューブを抜く日がやってきました。毎日数回のチューブ内洗浄と3日おきのチューブ入れ替えが大変でしたが、これにて解放されました。この傷跡は、自然に閉鎖されますので、安心してください。数日後の帰宅が決まりました、飼い主のご夫婦は、2日おきに遠くは倉橋から1時間以上かけてミー子の面会に通われました。お二人の愛情により無事に回復、そして、退院を早めたのは間違いありません。ミー子元気でね〜!

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●退院後のミーコ
退院して7日後のミーコです。喉の傷が僅かに残りますが、すっかり元気になりました。艶がでて、少し若返ったようにも見えます。ミーコの左に見えるのが胃チューブの先端です、そこから足らない栄養、薬を簡単に与えることができ、体重増加にも貢献しています。


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