犬の脾血腫 [News]
●ブッチー ♀ コーギー 13歳
毎度おなじみの脾臓の問題です。今回は、身体の大きさに占める過去最大級のそれは、それは大きな代物でした。飼い主さんの主訴はなんと、「妊娠したのでは?」でした。だんだんとお腹が大きくなり何時になったら子供が生まれるのかと心配になって連れて来られたのでした。
●著しい腹圧
大きな腹部病変のある例では、手術中の呼吸管理がとても大切になります。また、いきなり腫瘤を摘出することで血行動態が変化して死に至ることもあります。
●手術
血管肉腫を心配しながら手術を進めました。
摘出後の腹部探査では、転移らしき病変を認めることはありませんでしたが、病理検査で確認を行う必要があります。
●脾血腫
脾血腫とは、腹部への鈍性外傷や何らかの血管障害に続発して生じる病変と言われます。術前に鑑別診断のための穿刺を行うことは危険を伴うので、術後の病理検査で確認することが大切です。異型性のない、つまり腫瘍病変でなかったことに安心しましたが、腫瘍でなくともお腹の中で膨れ上がっていたので、強い外傷が加われば大量出血、そして、失血死と言うことにもなりかねませんでした。
●子宮内膜症と腺筋症
脾臓を摘出した後に内臓を精査すると、子宮の異常も見つかり同時に取り出しました。結果は、子宮内膜症と腺筋症でした。子宮内膜症はその後続発性の細菌感染で子宮蓄膿症、腺筋症を併発する可能性があるので、一緒に処置できたことは有意義でした。また、腺筋症は平滑筋系腫瘍との鑑別が必要のため病理検査は十分に意味がありました。
●10日目
お腹は見ての通りスッキリとし、貧血(24%、脾臓の一部が裂けて腹部内で出血していたため)も正常(40%)復しました。今までトボトボとしか歩くことしかできなかったそうですが、術後は見違える様に走り回っていいるそうです。脾臓に悪性所見なし、ブッチーの前途は明るい。
関連タグ :
お気持ちに感謝! [院長コラム]
猫の糖尿病 [News]
●クマ ♂ 9歳 Mix
主訴は「多飲多尿、脱水、嘔吐、体重減少など」でした。この症状と高齢の猫であることで高率に疑う疾患は、慢性腎不全と糖尿病です。早速、血液検査と尿検査を行いました。結果は血糖値456mg/dl。糖尿病を疑いましたが、先ずは食事でコントロールすることにトライしました。また、気を付けなければいけないことは、猫はストレスでも高血糖になることです。
●猫の糖尿病
糖尿病は、人間同様に生活環が変化し、2番目に多い内分分泌疾患と言われます。危険因子は@年齢;9-13歳がピークA肥満B中性化(避妊、去勢)C性別;♂に多いD品種;♀の1.5倍などが上げらます。
糖尿病には2つのタイプがあり、猫は2型糖尿病が最も多く、インスリン非依存型とも呼ばれます。つまり、インスリン注射の必要がなくなる可能性があります。
●治療
治療は、状況によりますが、多くは初診時点で高血糖により著しく脱水し衰弱していることが多く、まずは輸液を行い脱水を矯正します。そして、インシュリンを低用量から開始し、一定期間後に血糖値を時間単位に追っかけて最低値血糖値を探します。そして、其の後の自宅での管理の為に飼い主さん自身が注射のトレーニングをして、朝晩注射していただかなければなりません。
●予防
予防は、肥満を防ぐことが大切で、既に肥満している場合は、徐々に減量させることが肝要です。減量を焦り、絶食を2日以上させた場合には、脂肪肝(肝リピドーシス)になる危険があります。私見ですが、猫は本来肉食であり、キャットフードを食べる生き物ではなく、なぜならばキャットフードの主成分は穀類(炭水化物)であり、ライオン、トラの食事は肉、内臓、骨であることは明らかです。遺伝子に逆らった食事を戴くことで、体に負担が生じ病気に繋がってしまうことを理解し、根幹から考え直さなくてはなりません。