猫の口腔内疾患 その1 [News]
●口腔内疾患
猫の代表的な口腔内疾患は、口内炎です。
今回の主訴は「食べたいけれども食べれない、食べると口を痛がる仕草をする」でした。口腔内の詳細を検査したくとも口を開けることにひどく抵抗するため、検査と処置を含めて麻酔をかけさせていただくことにしました。
●歯肉腫脹
主訴と抵抗感から口内炎と予想をしていましたが、口内炎、口峡炎共に存在しませんでした。歳の割に歯石もほとんどなく綺麗で歯の動揺も見られませんでした。
しかし、右の上顎犬歯部における軽度の腫脹と歯肉の一部の凹みが観察されました。
そこで、レントゲン写真を撮影をしてみると.....。
歯槽骨が溶解し、歪な象牙質、黒いスペースが見えました。
この写真から膿瘍と歯肉縁下の歯石堆積を疑いました。
●抜歯および処置
抜歯した犬歯です。
外に出ている部分には、ほとんど歯石がみられないのですが、歯肉縁下には多量の歯石と膿が付着、堆積していました。歯肉を切開剥離し、歯槽骨の一部を切削し、洗浄を繰り返しました。膿が著しいため、縫合は時期をずらすことにしました。
●その他の疾患
口が痛くて長期に渡り食べれず痩せているのかと思いきや、食べれなくなったのはつい最近のことだそうです。怒りっぽい性格と著しい削痩状況から甲状腺ホルモンの測定をお勧めしました。予想通り甲状腺ホルモンレベルが高く、甲状腺機能亢進症と診断できましたが、治療用の食事は好きではなく、また薬も飲まされない状況では、せっかく診断が下っても悩ましい問題が残ります。
犬の扁桃腺切除 [News]
●キャバリア モカ ♂ 5歳
「2年前から症状があったが、特に最近いびきの音が酷い」との主訴で島根県から来院されました。身体検査では、主訴の通り呼吸音が気になりました。他には、指の間、耳が赤く、歯石が中程度付着していることが気になりました。
●喉の観察
いびき様の大きな音を発するとなると@軟口蓋過長A口腔内腫瘍B扁桃腺腫大C小嚢反転などが考えらえます。中でも@の軟口蓋過長症がほとんどを占めます。しかし、犬種がキャバリアとなると、心臓病は有名ですが、軟口蓋過長の経験は過去にありません。とにもかくにも口腔内を観察させていただくために麻酔許可を戴きました。
●左扁桃腺の切除
開口するとまず目に飛び込んできたのは、左扁桃腺の腫大でした。そして、他に異常がないかを詳しく観察した結果、この扁桃腺が原因であると仮定しました。
扁桃腺腫瘍も考慮して、切除の際には大目に組織を切除することを意識しました。
●術後
術後3日目までは、まったくイビキが収まらず、次には鼻の中に問題があるのか?と次なる検査を検討しましたが・・・4日目以降は、寝ていてもどこへいるのか分らないほど、静かになった報告を受け、安心しました。
●病理結果
結果には悪性所見はなく、症状は治まり病理結果も安心できるものでした。遠方から来ていただいた甲斐がありました。
犬の甲状腺癌 [News]
●メイ ビーグル ♀ 13歳
軽度のアレルギーと甲状腺機能亢進症で治療中でしたが、今回は、「喉の下が腫れてきた!」とご連絡いただきました。
●頚部腹側の腫大
超音波検査と同時に組織検査を行った際に、既に甲状腺癌と診断がついていました。甲状腺癌は、血管が豊富で、浸潤性が強いため切除がしばしば困難と言われます。周辺組織を巻き込んでないことを祈って手術をおこないました。
●甲状腺癌とリンパ節
左が付属リンパ節、右が大きく腫大化した右甲状腺癌です。
頸動脈からの分離に時間を要しましたが、周辺組織を巻き込むことが少なくカプセルごと切除できました。付属する頚部リンパ節の腫脹があったため同時に切除しました。
●術後
翌日から通常通り食欲があり安心しました。3日間は入院いただく予定です。そして、これから免疫を増強して転移を防ぐことが新たなチャレンジになります。
●朗報
病理検査の結果は、腫瘤は被覆化されており腫瘍細胞の脈管浸潤はなく摘出は完全でした。また、腫脹したリンパ節に腫瘍細胞の転移、浸潤はありませんでした。朗報ですが、甲状腺癌は一般に増殖が速く気管、食道、咽頭へ浸潤傾向があり、遠隔転移することが比較的多い腫瘍と言われます。