いつもの犬の歯石除去 [News]
●チャッピー ♂ 10歳 Dax
いよいよ口の臭いが溜まらず、また、我々の勧めでようやく飼い主さんの重い腰が上がり、歯石を除去する機会をいただきました。
●処置前@
大量の歯石と毛が堆積しているのが分かります。また上顎第4前臼歯前方に腫瘤が見つかりました。
●処置前A
下顎の切歯に堆積した毛の塊(⇒)に注目ください。長期間この状態を続けると炎症が持続して炎症が継続し、歯肉縁下に蓄積する歯石同様にその炎症により歯肉が後退して歯の動揺が始まり抜けてしまいます。
●処置前B
右側に比べれば程度は軽いですが、一部で歯肉が後退していることが想像できます。
●処置後@
上顎前第4前臼歯では、歯茎が著しく後退し、根の部分が露出しています。こうなると食べ物がどうしてもその根部に蓄積しやすくなりますので、食後の歯ブラシを行っていただくことは、非常に有益です。
●処置後A
同じく、著しい歯肉後退と抜歯後の像です。前歯は根が一本ですので、特に抜けくなります。
●処置後B
●収穫
収穫とは失礼な表現ではありますが、切歯(前歯)、後臼歯(奥歯)そして、前歯に大量に堆積した毛の塊が取れました。毛の塊は、長年熟成され菌と食べ物がはびこり、それはそれは、素晴らしい香りが漂っていました。翌日より、飼い主さんも喜んで頬ずり出来るようになり、愛が深まることを嬉しく思います。
毎度の事ですが、早期に歯石除去を行い炎症を持続させない、歯石を歯肉縁下に侵入させないことが何より大切です。歯は複数あること、目にさらされないことで、意識と発見が薄れどうしても後手に回ってしまいます。何度でも繰り返しますが、早期(軽症)歯肉炎の段階で歯石を積極的に除去することをお勧めします!
関連タグ :
犬の下顎骨骨折 [News]
●ダックスフンド ♂ 6歳
「同居犬との喧嘩で下顎が折れてしまった!」と他院の先生よりご紹介いただきました。全身麻酔下で詳細を調べるためにレントゲン写真を撮影しました。
●下顎骨整復
歯の状況(動揺、炎症、残存歯根)から口腔内と、骨に直接アプローチする固定法を計画しました。
まず、骨折部位2か所にワイヤーを掛けて固定しました。
●口腔内固定
次に口の中は、咬み合わせを確保して折れている部位を中心に固定を行いました。
●食道カテーテル
最後に、食道部分にカテーテルを装着して終了しました。1か月はこのチューブより食事を給与してもらう予定です。
関連タグ :
猫の呼吸困難2(うっ血性心不全) [News]
●ハッチ 19歳 ♂ シャム
「食欲があるが、息が荒い!?」と来院されました。胸部のレントゲン撮影を行うと、大量の胸水を疑う所見があり、超音波検査では、心臓の左と右の弁の著しい逆流が観察されました。先ずは、胸からの材料採取の為に胸腔穿刺を行いました。
●胸部レントゲン
レントゲンでは、肺は空気を含むために黒く映るのですが、液体は反対に白く映ります。肺が虚脱し約3割しか空気を含んでない様子が観察されました。
●超音波検査
胸腔内の胸水貯留と共に心臓の左右の弁における、著しい逆流が観察されました。
●胸水
胸腔内カテーテルを留置し、胸水を抜きました。そして、その胸水を分析し(細胞診、培養)て原因の特定を行います。胸水は、約350ml抜けました。
●排液直後の写真
概ね肺が膨らみ、黒く空気を含んだ領域が広がりました。
●診断
胸水は、変性漏出液で乳びでした。乳びが貯留する原因には、腫瘍、乳び胸、肺様捻転、心不全が上がります。今回は、両心不全による静水圧の上昇により、胸水がたまったのでした。さっそく、心臓薬を処方すると約8日で胸水貯留が止まりました。
●飼い主さんへの注意事項
飼い主さんは、高齢になり異常を生じると、なんでもかんでも歳を理由に老衰にしてしまう傾向にあります。今回のハッチは19歳でしたので、呼吸が重いのを数か月前から確認しているにもかかわらず、食欲があるので歳による変化だからしょうがないと思っていたそうです。いつも繰り返しお話しすることですが、歳を重ねても呼吸が悪くなることはなく、ほとんどが年齢とは関係の無い異常が生じていることを肝に命じて、早く来院していただきたいと思います。おかしいと感じたなら「人間ならどうだろう?」と置き換えて考えて欲しいものです。