犬の慢性鼻汁 [News]
●きなこ 14歳 ♀ ボーダーコリー
「数か月前から鼻から膿が出る」主訴でした。
●持続的な片側鼻汁
片側からの膿汁排出の原因は、異物、腫瘍、歯根膿瘍などが考えられますが、まずは、麻酔をかけて歯の検査をさせていただくことにしました。ちなみに、鼻汁塗抹検査は、白血球が捕獲していました。つまり細菌感染が存在することが分かりました。
●第四前臼歯側方ポケット
探査用のプローブによる検査を進めました。一見正常ですが、第4前臼歯口蓋側に微かな膿を見つけ、プローブを挿入すると、正常では3mm程度のスペースが3pの深さまで入り込む異常を見つけました。歯の状態を目視確認するために歯肉切開を行いました。
●歯肉切開、抜歯
第4前臼歯は3本の根を持ちますが、口蓋側の根はレントゲンの通り、既に溶解吸収され消失していました。そして、抜歯を行うとその奥には、大量のクリーム状の積載物(膿)の塊が充満し、大きな穴が開いていました。
●排膿、洗浄
大きな穴から出た大量の積載物を優しく掻き出し、そして、洗浄を繰り返しました。大きな穴は、鼻道を貫通し広範囲に口蓋の骨を侵食していました。
●フラップ形成
その穴を放置すると食べ物が鼻道に入ってしまうため、口腔粘膜を利用して穴をふさぐ計画を立てました。
●縫合
粘膜のフラップにより無事に穴が覆われました。
全ての歯の再チェック、歯石除去、歯肉腫瘤の切除、ポリッシングを行い、全行程(約4時間)が終了しました。
*全行程の中には、術前の胸部、四肢のレントゲン撮影、腹部超音波検査が含まれます。
老齢でしたので、流石に麻酔の覚醒には時間を要しましたが、翌日からは食欲は正常に復しました。
長時間に渡りご苦労様でした。
●教訓
歯石の蓄積が僅かであっても、今回の様な事態が発生することがあります。定期的な歯石除去の際に、一本一本調べて記録に残しておくことが大切です。
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いつもの犬の歯石除去 [News]
●チャッピー ♂ 10歳 Dax
いよいよ口の臭いが溜まらず、また、我々の勧めでようやく飼い主さんの重い腰が上がり、歯石を除去する機会をいただきました。
●処置前@
大量の歯石と毛が堆積しているのが分かります。また上顎第4前臼歯前方に腫瘤が見つかりました。
●処置前A
下顎の切歯に堆積した毛の塊(⇒)に注目ください。長期間この状態を続けると炎症が持続して炎症が継続し、歯肉縁下に蓄積する歯石同様にその炎症により歯肉が後退して歯の動揺が始まり抜けてしまいます。
●処置前B
右側に比べれば程度は軽いですが、一部で歯肉が後退していることが想像できます。
●処置後@
上顎前第4前臼歯では、歯茎が著しく後退し、根の部分が露出しています。こうなると食べ物がどうしてもその根部に蓄積しやすくなりますので、食後の歯ブラシを行っていただくことは、非常に有益です。
●処置後A
同じく、著しい歯肉後退と抜歯後の像です。前歯は根が一本ですので、特に抜けくなります。
●処置後B
●収穫
収穫とは失礼な表現ではありますが、切歯(前歯)、後臼歯(奥歯)そして、前歯に大量に堆積した毛の塊が取れました。毛の塊は、長年熟成され菌と食べ物がはびこり、それはそれは、素晴らしい香りが漂っていました。翌日より、飼い主さんも喜んで頬ずり出来るようになり、愛が深まることを嬉しく思います。
毎度の事ですが、早期に歯石除去を行い炎症を持続させない、歯石を歯肉縁下に侵入させないことが何より大切です。歯は複数あること、目にさらされないことで、意識と発見が薄れどうしても後手に回ってしまいます。何度でも繰り返しますが、早期(軽症)歯肉炎の段階で歯石を積極的に除去することをお勧めします!
関連タグ :
犬の下顎骨骨折 [News]
●ダックスフンド ♂ 6歳
「同居犬との喧嘩で下顎が折れてしまった!」と他院の先生よりご紹介いただきました。全身麻酔下で詳細を調べるためにレントゲン写真を撮影しました。
●下顎骨整復
歯の状況(動揺、炎症、残存歯根)から口腔内と、骨に直接アプローチする固定法を計画しました。
まず、骨折部位2か所にワイヤーを掛けて固定しました。
●口腔内固定
次に口の中は、咬み合わせを確保して折れている部位を中心に固定を行いました。
●食道カテーテル
最後に、食道部分にカテーテルを装着して終了しました。1か月はこのチューブより食事を給与してもらう予定です。