猫の回腸、盲腸の切除 [News]
●ゆうた ♂ 日本猫Mix
昨年11月の血液検査で蛋白質の低下(Alb2.3)が見つかり精密検査をお勧めしました。そして、1月後半から不定期な嘔吐が始まり、食欲にムラが発現するようになりました。腹部をじっくりと触診すると腸管にやや硬いふくらみが見つかりました。ウイルス検査では、コロナウイルスが陽性で、コロナウイルスによる猫伝染性腹膜炎と仮診断しました。
其の後、インターフェロン療法を開始し、一旦は塊は消え嘔吐も症状も改善しましたが残念ながら再発。3か月悩んだ末に飼い主さんが重い腰を上げて、この度の開復手術に相成りました。
●開腹手術
触診と下の超音波検査の結果通り、肥厚して硬くなった腸管が見つかりました。病変部は、盲腸を中心として回腸、直腸を含んでいました。
●縫合
腸管を大きく切除した後に、回腸部と直腸部の口径サイズを調整して縫合しました。
●切除部位
回腸には、免疫の主役組織のパイエル板が存在します。よって、出来るだけ回腸の切除を避けたかったのですが、病変の浸潤が広範囲に及び止む無く摘出しました。
術後の経過は良好、予想通り腸管を広範囲に切除している影響で下痢が続いています。しかし、食欲は旺盛で、頻繁に続いていた嘔吐は全く無くなりました。神経質なので出来るだけ早くお返ししたいのですが、飼い主さんの希望で暫く続く下痢の管理の為に入院していただく事になりました。原因は、コロナウイルスによる腸の肉芽腫の増殖病変で、根本的治療は、免疫を増加させ、そしてウイルスを排除することにあります。暫く治療は続きますが、リラックスして頑張りましょう!
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●病理検査
病理検査の報告は、予想通り伝染性腹膜炎による炎症である可能性が一番強いという返答でした。上記を目指して頑張りましょう!
中医学 [News]
●中医学診断
当院では、慢性疾患の場合には中医学診断基準に基づいて主に動物用漢方薬の処方を行っています。しっかりとお話(性格、行動、症状)を伺いながら人間と同様には行きませんが、舌診、腹診、脈診を意識して、西洋医学的診断と併せた身体検査を行っています。
東洋医学では、四診(望、聞、問、切)でデーターを集め、病状を大きく陰、陽/虚、実/湿、寒/熱、湿/乾に分類します。
●漢方処方
統合医学的(東洋医学と西洋医学のmix)診断を行った後は、慢性疾患の多くで漢方薬を処方しています。急性疾患では、西洋医学の薬を使用しますが、慢性疾患では、漢方薬を好んで使用しています。
●西洋医学との違い
東洋医学は体を全体から観察し調整します。一方、西洋医学は、身体を物と考えて、一部分の故障を見つけて処置します。分かりやすく言えば、パーツの応急処置になります。しかし、WHO(世界保健機構)は、肉体は、身体性と精神性と霊性からなると伝えているように、身体は、単なる機械ではなく精神(感情)が体に大きく影響を及ぼし、さらには、霊性部分、つまり体を流れる気(微細なエネルギー)が滞りを起こすことで問題を発生すること知らなければなりません。
肉体に症状が出る前に、まずエネルギー取り込み口に障害が発生します。そのエネルギー取り込み口を調整することが自然治癒力を取り戻す一番大切で最初の処置であること。本来の根本原因がどこにあるのかを微細エネルギーを含めて考察していかなければ、完治にはつながらず、再発を起こすこと。また、動物は元々、自分で自分の体を治す力を持ち合わせていることを忘れてはならず、我々が間違った方向へ導き、あるいは、薬の毒性で身体が持つエネルギーを抑制してしまうこと、を理解していなりません。
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猫の化膿とFIPからの復活 [News]
●メイ ♂ 2歳 日本猫
2ヵ月前に陰嚢部分を咬まれたそうです。今回は、治りが芳しくないので、外科的処置を行うことにしました。
●化膿巣
よりによって悪いところを咬まれた(赤矢印)ものです、両睾丸共に化膿し、既に一方は萎縮(黄矢印)していました。抗生剤の治療を試みましたが、改善がみられないので、両睾丸摘出を含めた膿瘍の解放処置を行うことにしました。
●睾丸摘出
感染して萎縮した睾丸と感染して腫大した睾丸を共に切除しました。左の睾丸の袋も感染が見られましたので一緒に摘出しましたが、右の睾丸の袋は無事で、その袋を使って喪失した切除創を再建することにしました。
●術後
片側の睾丸の袋を使用したため、多少皮膚のずれがありますが、問題は生じないと思われます。
●摘出睾丸
左が感染して腫大した睾丸、右が萎縮した睾丸です。
●その後の猫伝染性腹膜炎(FIP)
以前、猫伝染性腹膜炎により盲腸周辺を大きく摘出する手術を行いました(記事「猫の伝染性腹膜炎FIP 完治を目指して!」を参照ください)。原因は猫伝染性腹膜炎でした。手術に続いてウイルス治療を行い一命を取り留めた経験があります。その後、再発も見られず順調に育ち現在に至っていましたが、今回睾丸を咬まれ摘出に至ったのは無念でした。