犬の膝蓋骨外方脱臼 [News]
●メロ トイプードル 6カ月 ♀
主訴は、「足を何か気にしていたが、日に日に状態が悪化し、足をつかなくなった」でした。訴えの後ろ足を検査すると、膝蓋骨が正常の位置にないことが分かりました。
●膝蓋骨外方脱臼
患肢は加重ができない状態で、膝蓋骨(膝のお皿)が外方へ脱臼し屈曲したまま固定された状況です。小型犬では、先天的に膝蓋骨内方脱臼の発生が多いのですが、小型犬の外方脱臼は珍しいことです。
●正常像(縦)
大腿骨の溝の上にお皿が乗っているのが分かります。
●正常像(横)
正常では、大腿骨の前方にお皿が位置しています。
●異常像(縦)
膝の真ん中から外れて外側にお皿が位置しているのが分かります。
●異常像(横)
膝からお皿が外れているため、レントゲン上に見えません。
上の正常像と比較するとよく分かります。
●手術
手術目的は、内方、外方共に膝蓋骨が付着する大腿直筋と脛骨粗面におけるラインを真っ直ぐに整えることが中心になります。
●滑車溝の形成
重度の脱臼では、膝蓋骨が走るレールの溝が浅くなってるので、人工的に溝の形成を行いました。
●関節包の切除
外側に膝蓋骨が脱臼することで、大きく伸びきった内側関節包の一部切除を行い縫合しました。反対側の内側支帯は、縫合せず解放のままとしました。
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冬子と命名 [News]
●たぶん3カ月 ♀ Mix猫
「歩けない」主訴で来院されました。動けない状態を見かねて奇特な方が保護されました。起立不能、中程度の脱水、ノミ3+、口腔粘膜蒼白、左肺後部に捻髪音が聞かれました。ヒゲは火で焼かれたのか、チリチリに縮んで短く変化しています。
●レントゲン所見
肺音に異常があるので、レントゲン撮影を行いました。
心臓に異常がないことから、急性の細菌性肺炎と仮診断し、抗生剤の治療を5日間行いました。6日後のレントゲンでは、ほぼ炎症が治まり肺音も正常に復しました。
初日
6日後
●冬子と命名
保護した飼い主さんが、季節柄「冬子」と命名されました。10日後の経過は、食欲旺盛、右半身に麻痺は残るもチョロチョロと動き回って、逃げ足が速いそうです。いたずらされた故に障害が発生した可能せいがありますが、冬ちゃんは誰も恨むことなくリハビリに励み、今を精一杯生きています。今回、保護された飼い主さんの愛に感謝です。
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犬の非心源性肺水腫 [News]
●シーズー 3ヶ月 ♀ トミー
1月2日、お正月真っ只中、10時頃。「最近、咬みつきが酷くなり、躾として口を持って押さえつけたんです」と優しそうなご主人から緊急に電話が入りました。直ぐに来ていただくと、それはそれは優しいご主人が心配そうにトミーを抱えてやってこられました。3カ月は、元気溢れる年齢です。しかし、大人しく打ち沈んだ感じが見られます。急ぎ身体検査を行うと、ヨダレ、口腔粘膜の蒼白、脈圧が弱く感じます。努力呼吸はありますが、肺での捻髪音は聞こえません。
鑑別診断のために、レントゲン、心電図、超音波、血液検査を行いました。
●要因
稟告と超音波検査(逆流なし)で心因性肺水腫を除外し、非心源性肺水腫をリストアップしました。リストは@神経原生A電気コードをかじるB上部気道閉塞が挙げられました。今回のお話から、押さえつけられることによる気道閉塞と怖かったのでしょうか、カテコールアミンの放出により全身血管が収縮し、肺循環へ血液が一気に流れ込んだ影響で過負荷が起こり肺水腫が発生したと考えました。
●肺水腫(レントゲン写真)
肺は空気を含むのでレントゲン上では黒く映ります。肺に水が溜まれば白く変化し、さらに気管支が浮き出る像(エアーブロンコグラム)が特徴的所見です。
●治療
レントゲン写真と臨床症状から利尿剤の血管内注射を行いました。血圧低下もあることから併せて強心剤を併用しました。20分すると利尿剤の効果で尿が大量に排出されました。さらに10分後には、苦しい呼吸困難から解放され、鳴きながらチョロチョロ動くまでに回復しました。
念のために夕方まで預って帰宅する予定です。
●反省
過去の経験では、非心源性肺水腫は電気コードをかじった例しか経験がありませんでした。今回、優しく真面目なお父さんが、躾の為に行った行為でしたが、普段が優しいのでよほど怖かったのでしょうか?動物の性格に合わせた適度の躾が必要であることを学びました。