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猫の下顎結合と硬口蓋結合の分離 [News]
●プチ 7歳ぐらい ♂ Mix
2週間行方不明で、近所の方から連絡を戴いたそうです。詳細を調べると、交通事故で頭をぶつけることで良く発生する、上顎と下顎結合部の分離がみられました。お腹も酷くぶつけているのか、著しい血尿と神経障害で尿が自力では出せません。できるだけ速やかな修復が必要ですが、風邪を引いて居る上に、長期行方不明により著しい脱水と栄養失調を伴っています。
●下顎結合の分離
7日後、麻酔をかけるには不十分な状態ですが、硬口蓋の穴が開いたままになっていることで、よだれと膿が止まりません。貧血PCV16%(正常は>27%)ですが、慎重に手術を行うことにしました。
●下顎結合の修復
分離した下顎をワイヤーで締結しました。
●硬口蓋結合の分離
●硬口蓋結合の修復
ワイヤーで分離部分を引き寄せて硬口蓋を縫合しました。
●術後
翌日からは、多量の鼻汁とヨダレがほとんど止まり、状態が改善してきました。また、膀胱内の出血により発生した血餅で、尿の閉塞を繰り返しましたが、現在は改善しています。神経障害による排尿の問題が残りますが、鍼治療で回復を計りたいと思います。
●再発
残念ながら一部が再び開いてしまいました。前回は、全身状態が非常に悪い中(貧血と感染)、短時間の緊急処置であったため不十分だったかもしれません。
今回は、全身状態がずいぶんと回復したので、時間の余裕があり、腰を据えてじっくりと処置を行いました。その後の経過は後ほど・・・・。
●3か月後
2度の処置を行い、やっと正常に復しました。上顎を固定していたワイヤーを抜き、後退していた歯茎を前進させて処置を終了しました。
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猫の歯髄感染症 [News]
●14歳 mix モモ
「2-3日前から食べなくなって、顔を触ると嫌がる」主訴でラインされました。写真で分かる通り、顎の下が腫れています。血液検査では炎症像のみが引っ掛かりましました。身体検査をクリアしたので、麻酔下であごの部分の精査を行うことにしました。
●レントゲン撮影
歯科専用のレントゲン装置で歯と骨の状態を検査しました。
軟部組織が激しく腫れ(白⇒)、その下の下顎骨は中心部が黒く変化し骨膜増殖(赤⇒)があることから、感染症を疑いました。
●探査
左下顎の犬歯が折れて、その周辺の歯肉が赤く炎症を起こしていました。折れた歯に沿ってプローブを挿入すると下あごの皮膚まで到達し、大きなスペースを形成していました。そのプローブの挿入口からは多量の膿が湧き出てきました。
●抜歯
問題となっている犬歯のほとんどは溶解していました。抜歯後、
歯科用のバーで抜歯後の歯槽骨を薄く削り、洗浄を繰り返しました。
●ドレイン装着
下顎の先端部に排液チューブを装着し、犬歯を抜いた部分は縫合を行いました。
●考察
人間であれば、折れた歯の歯根とその周囲が疼けば直ぐに歯医者へ駆け込むのでしょうが、動物の場合は食欲がなくなるまで気づけないことが多く、普段から自宅での身体検査を充実するか、あるいは定期検診を充実して欲しいと思ったケースでした。
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猫の口内炎2 [News]
●ウララ 11歳 ♀ 三毛猫
「出血し、食欲がなく、よだれを出し、前足で口を掻く」主訴で来院されました。口の中は、痛々しく変化していました。
炎症著しい肉芽病変は、口の側方からはみ出していました。
●口頬部の痛々しい炎症病変
●口内炎治療と対策
口内炎の原因は長期に渡る細菌に対する自己免疫による炎症反応です。治療は、抗生物質、免疫抑制剤、インターフェロンなどがありますが、最も効果的なのは全ての歯を抜歯する外科処置です(80%改善)。外科で特に気を付けなければいけないのは、抜歯作業中に歯の小さな根が折れてしまう残根の問題です。この歯根片を残してしまうと、術後再発の可能性が生じるので熟練した手技が必要となります。
全抜歯に抵抗を持たれる飼い主さんが多く、そのお気持ちは十分に理解できます。しかし、長期薬物管理の副作用を考えると積極的に外科を考量する必要があります。また、抜歯後は、歯が無くとも食事は通常通りいただくことが可能です。
●1ヶ月後
今回は、舌根部に膿瘍を形成してしまいました。ようやく飼い主さんが重い腰を挙げ、全抜歯の許可をいただく事ができました。全抜歯は、この状態が治まり次第行う予定です。
●口腔学セミナー
先般、歯科学の権威者の一人あるペンシルバニア大学のDr.Harveyが来日されました。猫の口内炎についてDr.Harveyも「現段階では、最後の手段ではなく、一番に選択すべき手技である!」と仰っていました。
私のしつこい質問にもかかわらず、丁寧にお答えいただき、数々の歯科の問題点が消化され、明日への臨床に大いに役立つご教授をいただきました。感謝。