犬の頚部腫瘤と外耳炎 [院長ブログ]
●コッカー 12歳 ♀
それは、それれは、凄いにおいを発して来院されました・・・・
長期に渡り大きくなった腫瘤がはじけ、その摩擦と滲出液による周辺皮膚の慢性炎症が見られました。「近所の先生には、高齢なので、手術をすると死んでしまうよ!」と言われ、今日まで約2年間程放置してきた様です。早ければ早いほど、小さければ小さいほど外科手術の侵襲は少なくなります。手術前にしっかりと検査を行い安全を確認し、また、その検査で手術ができない状態であれば、速やかに改善策を検討して手術に臨むことが肝要です。
●慢性外耳炎
臭いの原因は、腫瘍の破裂と外耳炎が併発していることが分かりました・・・・。こちらも長期に渡り慢性炎症が続くことで、耳道の著しい増殖と慢性感染が発生していました。このようなケースの多くには、アレルギーが根底に潜んでいますので、アトピーあるいは食物アレルギーあるいはその両方が関与しているのかを、しっかりと鑑別して治療方針を立ち上げなければなりません。姑息的に対症療法をくりかえすだけでは、その治療薬による副反応で新たな病気を発生させることになります。全ての病気は「元から立たなきゃダメ!」なのです!
●7日後
耳からの滲出液の培養結果は、緑膿菌でした。通常、ここで抗生剤を使用するのですが、当院の方針では使用を控えます。増殖病変のある環境では、たとえ培養検査でヒットした抗生剤を使用しても、再び感染が再燃します。また、アレルギーがベースにあると炎症が継続し感染がコントロールできず、軽減したとしても一時的になります。
●摘出腫瘤
首が軽くなり、動きも良くなりました。耳の治療は、漢方薬と鉱石の粉を点耳します。10日後の抜糸では、切除創はすごくきれいで、左右の外耳共に80%の改善が見られました。アレルギーに関しては食事アレルギーが疑われるため、特定の蛋白質に限定して開始しました。外耳は様子を見ながら摘出術を行うかどうか決めたいと思います。
●2週間後
特定蛋白を食べ2週間が経過しています。耳の匂いも大幅に減少し、赤みも少なくなってきました。炎症が取れても増殖病変が残りますので、外耳道切除術を行うかどうかが今度の課題です。
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猫の気道閉塞 [院長ブログ]
●約3カ月 ♀ Mix 名前はこれから
「数時間前から状態が悪く、どんどん弱ってきた」と時間外緊急で来院されました。確かに呼吸状態が悪く、体温は35度以下、チアノーゼ、虚脱がありました。緊急処置をしつつお話を伺いました。症状は急性で、電気コードを咬んだ形跡はありません、また普段から発作、特別な持病もないそうです、つい数時間前まで元気に遊んでいたと言われます。
すると、黒い異物が頭をのぞけました。鉗子を使って喉の入り口に微かに見える物体を引っ張り出しました、最初は何者かよく分からず、恐る恐る触りましたが、その正体は服の飾りとなるボンボリだったのです。
●麻酔の覚醒中
ご存知の通り猫の舌には、返しがついているので、引っかかるものが入ると口側に戻すことができません、その物体がたまたま喉一杯の大きさであり、摩擦抵抗が強かったので、喉まで入ったのですが、食道入口にかけて居座ることになり、呼吸困難⇒虚脱に繋がったのでした。
●麻酔の覚醒30分後
喉から異物が取れると、血圧が上昇し、徐々に酸素飽和度も上がってきました。30分もすると鳴き声が聞かれ、全てが正常に復したのでした。
間一髪で亡くなる危ないところでした。時間外でしたがスタッフが未だ沢山残っていので、良いタイミングで救命できたことは何より幸いでした。今後は、せっかく拾い上げた命ですから大切にして欲しいと願います。
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犬の膝蓋骨外方脱臼 [院長ブログ]
●メロ トイプードル 6カ月 ♀
主訴は、「足を何か気にしていたが、日に日に状態が悪化し、足をつかなくなった」でした。訴えの後ろ足を検査すると、膝蓋骨が正常の位置にないことが分かりました。
●膝蓋骨外方脱臼
患肢は加重ができない状態で、膝蓋骨(膝のお皿)が外方へ脱臼し屈曲したまま固定された状況です。小型犬では、先天的に膝蓋骨内方脱臼の発生が多いのですが、小型犬の外方脱臼は珍しいことです。
●正常像(縦)
大腿骨の溝の上にお皿が乗っているのが分かります。

●正常像(横)
正常では、大腿骨の前方にお皿が位置しています。

●異常像(縦)
膝の真ん中から外れて外側にお皿が位置しているのが分かります。

●異常像(横)
膝からお皿が外れているため、レントゲン上に見えません。
上の正常像と比較するとよく分かります。
●手術
手術目的は、内方、外方共に膝蓋骨が付着する大腿直筋と脛骨粗面におけるラインを真っ直ぐに整えることが中心になります。
●滑車溝の形成
重度の脱臼では、膝蓋骨が走るレールの溝が浅くなってるので、人工的に溝の形成を行いました。
●関節包の切除
外側に膝蓋骨が脱臼することで、大きく伸びきった内側関節包の一部切除を行い縫合しました。反対側の内側支帯は、縫合せず解放のままとしました。















