犬の食事アレルギー(下痢と皮膚炎) [News]
●ブルドック 6歳 ♂
飼い主さんとは20年ぶりの再会でした。ワンちゃんの主訴は、「慢性下痢。下痢が2か月止まらず、痩せてだんだんと弱ってしまうので心配でしょうがない。そして歩けない。」と以前のご縁を辿って再び来院されました。
●検査
昔話に花を咲かせながら、検査を勧めました。
検便では特に異常なし。
身体検査では、下痢による腹痛、脱水はなく、皮膚の炎症が著しいことが気になりました。この炎症は、小さなときからずーと継続しているとのことでした。
耳介の炎症
指間の炎症
下顎の炎症
●治療(断食)
まずは、長期に続く下痢に対して断食をお願いしました。しかし、これを飼い主さんに理解してもらうことが、それはそれは大変なのことなのです。皆さん思うことは、@断食したら死んでしまうのではないかA痩せたら可哀そうB室内に一緒にいるので見るに忍びないなどなど・・・・。いつもお伝えする言葉は、「野生では毎日規則正しく食事をいただけることはなく、7日でも10日でも獲物がとれずさ迷い歩くことは日常なのです、しかし、彼らは目をぎらつかせて生き生きと生きているではないですか!?」「野生では病気になったら、何も食べず巣穴で横になって回復を待つのです」「人間と同じく飽食の時代は、つい最近の話であって、戦前は人間も動物も皆質素な食事をしていたのです。我々も動物も飢餓の遺伝子は備わっていても、飽食の遺伝子は持ち合わせていないのです、だからまずは断食して治癒促進、免疫増強、デトックス(毒だし)を行いましょう!」さらには「俳優の榎木孝明さんは30日間の断食(正確には不食)をされたけど、体調が改善され元気に生きてますよ〜!」と。
●結果
「不憫で可哀そう〜」と涙を流しながらも、何とか私の言いつけを守っていただきました、3日目までは下痢が続きましたが、7日目からは軟便に変化し、8日目から食事を徐々に開始し、ほぼ良便(正常便)に変化しました。飼い主さんにとってはその便がお宝の様に見えたと思います。
便が固まると同時に、皮膚の赤みが引き痒みが治まり、軽やかに歩けるようにりました。この理由は、食事アレルギーにより皮膚の痒みが治まり、指の炎症が低減することで痛みが和らぎ歩けるようになったからでした。
こんなに劇的に良くなったのに飼い主さんは、「食べたくてしょうがない子なので、絶食は2度としたくない」と言われます(笑)。
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犬の犬歯抜歯後の再被覆術 [News]
●ダックスフンド 10歳 ♀
「数か月前、歯石除去の際に抜歯を行い、口腔粘膜による被覆術(フラップ)を行ってもらい、しばらくは良かったのですが、どうも穴が開いているようです?」という主訴で来院されました。右上顎犬歯部は、窪みがあり拡大鏡で観察すると小さな穴が開いているのが分かりました。
●再手術
残念ながら、この状態を観察していても穴が塞がらないことをお伝し、当方で再手術をさせて頂くことにしました。2度目の手術ですので、短くなっている口峡粘膜をカバーするために大きめの切開が必要になります。
●縫合
口唇粘膜と硬口蓋の高さを合わせて丁寧に縫合しました。
●左側犬歯部分は、はっきりとわかる穴が開いていました。右側同様の処置を行いました。
●縫合は血行確保のために術後の組織短縮による牽引を見込んで大きめの被覆弁を形成し、硬口蓋粘膜と口唇粘膜の高さを合わせて被覆弁を丁寧にあつかい縫合する必要があります。ちなみに、穴を放置していると食べ物が鼻に入り、クシャミ、慢性鼻炎を発生することになりますので、積極的に被覆することをお勧めします。