犬の皮膚型リンパ腫 [News]
●べべ ♀ 15歳 ビーグル
半年前から口の中が赤く、食べるのが遅いとの主訴でした。確かに歯石沈着の程度に比べて、歯肉、粘膜の炎症が顕著であることを認めました。他には、皮膚と肛門の潰瘍状病変も認めました。
●皮膚病変
●組織検査
早速、口腔粘膜と皮膚の組織検査を行いました。結果は共にリンパ腫でした。「皮膚型リンパ腫」とは、皮膚にできるリンパ腫ですが、口腔粘膜タイプが皮膚タイプと比較して生存期間が4倍あると言われます。残念ながらべべは、皮膚にも粘膜にもリンパ腫が存在しました。
●治療
皮膚型リンパ腫の治療は抗癌剤を使用するのが通例ですが、飼い主さんの希望はできるだけ抗癌剤を使用したくないとのことで、免疫増強療法を選択されました。確かに抗癌剤の全身投与は、腫瘍を叩きつつも、自己も同様に傷つける方法です。理想は、腫瘍組織のみをピンポイントで攻撃できれば良いのですが・・・いつもながら全身性に広がる腫瘍では、難しい選択を迫られることになります。
犬の肺高血圧、自己免疫性溶血性貧血、アレルギー性皮膚疾患 [News]
●シーズー ♂ 12歳
この度は、心臓の検査のために来院されました。心臓の検査は、素早くストレスなく行うために、通常は鎮静剤を使用させていただきます。(リラックスできる場合は不要です)まずは、鎮静剤の使用に先立って血液検査をさせていただきました。すると、中程度の貧血があることが分かり、溶血を伴っていて続く尿検査でも溶血が確認されました。
●肺高血圧症と左右心不全
5年前から収縮期性雑音が聞かれ、精密検査を毎年の様にお勧めしていましたが、今回ようやく検査をしていただけることになりました。結果は、重度の左右心不全でした。左の心臓の悪化から始まり右の心臓までその影響を及ぼす(肺高血圧症)に至っていました。このまま放置すれば循環不全による肺水腫が早い段階でくることになります。これからは、真剣に観察(咳、失神、運動不耐性)を行っていいただくことをお願いしたいと思います。
●自己免疫性溶血性貧血
貧血の原因は、自己免疫性溶血性貧血でした。この病気は自己の赤血球を自分で破壊してしまう疾患です。その他の出血の原因を除外して、赤血球の大小不同、再生像、分断赤血球(血液が壊れている様子)から診断に至りました。
●アレルギー性皮膚疾患
掻痒の発症時期、季節性からアトピー性皮膚炎と仮診断しましたが、現段階は、まず心臓と溶血性貧血を落ち着かせてから治療に入りたいと思います。
●その後
貧血は、PCV27%が36%に増加してきました。飼い主さんの感想も、「元気になって咳も少なくなった」です。
中年(7歳)を超えると、人間の40歳ぐらいになりますので、色々と問題の発生が始まり、さまざまな病気が複合して発生することも多くなります。
*PCVとは?:血液を細胞成分と血漿成分に分離して赤血球の量を測定する方法です。
犬の骨肉腫 [News]
●チョウさん 13歳 コーギー ♂
「急に左後ろ脚の膝の部分が腫れて心配」とご相談を受けました。早速、細胞診を行うと分裂像を認める活発な悪性腫瘍と察したため、積極的に断脚をお勧めしました。通常、断脚はなかなか踏み切れないとことですが、チョウさんの場合は、後ろ足が既に使えない状態であったため、飼い主さんの早い決断を戴くことができました。
骨肉腫の悪条件は、@5歳未満A大型犬B術前術後のALPの上昇C前腕骨近位と言われています。
幸いチョウさんは、上記の条件のいずれにも属さないことが不幸中の幸いでした。今後の治療は、飼い主さんと十分に話し合った結果、免疫増強療法を中心とし、抗癌剤は使用しないことにしました。