慢性の嘔吐と下痢 [News]
●レオ チワワ 7歳 ♂
1ヶ月前から下痢と嘔吐を繰り返していたそうです。そして、癌、異物はなく、膵炎の疑いと診断されたそうです。数日前に、飼い主さんの紹介で来院されました。
●超音波検査
触診で異常を感じましたが、超音波検査を行うと明らかに腸の問題が発見されました。大きく肥厚した一部の腸管および塊(腸管膜リンパ節?)があります。
●肥厚した小腸
血液中のアルブミン(たんぱく質)が時間をかけて低下していので、このままでは麻酔はかけられません。点滴、そして輸血をしてアルブミンを上昇させて手術を行いました。かなりの広範囲で腸管が肥厚、硬結していました。この腸であれば、下痢もいたしかたありません。嘔吐と下痢を止めるべく、異常部位の部分切除を行いました。
●腸管吻合
肉眼的に異常が見られる部分を広範囲に切除し、腸の断端を縫合しました。腸管膜リンパ節は大きく腫れあがっています。経験的にリンパ腫を強く疑います。
*低蛋白を伴う代表的な消化器疾患(下痢、嘔吐)は、リンパ腫、蛋白漏出性腸炎、炎症性腸炎があります。しかし、下痢がない場合もあるので曲者です。
●その後
手術前までは、飼い主さんが無理矢理に食べさせていたそうです。しかし、嘔吐と下痢は続いていました。術後2日目からは、自身が進んで食事を欲するようになってきました。嘔吐もありません。顔色も良く気分も落ち着いています。嬉しい限りであります。
●細胞診所見
腸の腫れあがった部分から材料を取り、細胞の検査を行いました。病理結果で確認をとりますが、未熟リンパ球が多数認められ、典型的なリンパ腫です。急ぎアメリカの腫瘍専門医に連絡をとりました。彼女は、マイルドな抗癌剤療法を勧めてくれました。私自身は、消化器型リンパ腫には、抗癌剤の期待は薄く、それを使用する事に否定的で迷うところですが、飼い主さんとじっくりと相談の上、治療方針を決めていきたいと思います。
●追伸
連続2週間以上、嘔吐、下痢が続けば慢性の消化器疾患と言えます。どこかに何らかの問題が発生していると考えられるので、早い段階で詳細な検査を受けることをお勧めします。
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卵巣嚢腫の影響 [News]
●大きな乳首と陰部
「陰部から膿が出る」とのことで来院されました。そのほかに過剰に増殖した乳頭(通常の5倍)と陰部腫大が見られます。不妊手術に積極的ではない考えで現在までこられましたが、この度、子宮蓄膿症が発生し、陰部から多量の膿が出たことで手術に踏み切られました。
●巨大卵巣
超音波検査で確認済みでしたが、乳頭と陰部拡大を物語る、想像通りの大きな卵巣でした。これで、すっきりとした毎日が過ごせると思います。長い間ご苦労様でした。
●考察
発情が無いのに陰部が腫れる。妊娠もしてないのに乳汁がでる。などの症状は、卵巣に異常があることが考えられます。一度、超音波検査で卵巣、子宮の観察をされることをお勧めします。
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「小さなイボがこんなことに」の続き。 [News]
●アメリカンコッカースパニエル、11歳、♂、ジョイ
先ずはじめに、ショッキングな写真でスイマセン。
皆さんに注意を呼び掛けるつもりで、あえて載せました。
4年前から全身にイボができはじめ、この春から一部が巨大化したそうです。手術をお勧めしましが、なんとか手術をせずに治したかったそうで、出血がひどくいよいよ管理ができなくなって来院されました。
●足にも
足にも同じような病変が存在しました。頭よりさらに広範囲です。
●凍結療法
何といっても血液のついた毛で固まってしまった患部を綺麗にすることに時間を要しました。切除も検討しましたが、あまりに患部が汚れているので(蛆も住んでいた)先ずは、凍結で腫瘍を小さくし、周辺の皮膚も落ち着いた所で、切除手術をすることにしました。上手くいけば手術をしなくても済むと思います。
●足も同じく
周辺を綺麗にして、頭と同じく凍結処置をしました。凍結処置は、組織を−20度に凍らせて壊死させ、脱落させる方法です。
●別人
約2週間すると、この出来物が取れる予定です。暫くの間は、組織が壊死することで、再び汚くなりますが、少しの辛抱です。顔を触ると咬みつくのでまったく管理ができなかったようで、処置前は目がどこにあるのか分からない状態でした。毛刈り、洗浄を繰り返し、そして、炭酸ガスレーザーによる多数のイボ取りを行い、見違える様に可愛い顔になりました。
●足も綺麗に
足周辺も同じく、血液の付いた毛玉でとことん覆われていました。1時間もあればと思っていましたが、この全ての作業に4時間も費やすことになるとは・・・・処置後の麻酔の覚めは驚くほど速く、飼い主さんも再会時に大喜びで、当日の夜に元気に帰宅しました。これから2〜3回麻酔を行いながら、体全体を綺麗にし生まれ変わる予定です。続く・・・・。
●2週間後
2週間後の映像です。腫瘤の大きさは、1/4程になり、匂いはほとんど無くなりました。
●同じく
足も凍結した組織は脱落壊死して無くなりました。いつも頭と足からかなりの出血があったそうですが落ち着きました。暫く飼い主さんの都合がつかないので10月になってから処置を継続していきます。
続く・・・・。