慢性嘔吐/幽門狭窄 [News]
●メグ 6歳 ♀ シーズmix
他の獣医さんから依頼いただいたケースでした。主訴は「4〜5か月前から時々嘔吐する」「最近は、食事後4−5日してくるとお腹がはって嘔吐する」「元気はあるが痩せてきた」でした。
●レントゲン撮影
先ずは、お腹のレントゲンを撮影して吃驚しました!
胃が著しく拡張し、お腹全域を占有し、膀胱の手前まで広がりを見せていました。
●著しい食塊
麻酔をかけて内視鏡検査をする前に食塊の処置を行いました。数日間の食事が堆積していたと思います。15時間以上の絶食をしていたのにかかわらず、大量のドックフードが残っていました。食事が胃に残っていると内視鏡検査の視野が妨げられるので、胃洗浄を繰り返すことになりました。なんとその間、1時間!
●超音波検査
胃のガスと食塊を除去した後に再度超音波検査を行いまいした。胃の幽門部(胃の出口)が著しく肥厚しているのがわかりました。
●消化管内視鏡
超音波検査通り、幽門部に肥厚が見られました。10か所の組織を採取して、病理検査へ提出しました。超音波検査では、胃の周囲のリンパ節の腫大がありましたので、悪性腫瘍の可能性を疑っています。なんとかこの状況を解決できるようにしなければなりません。
●病理結果
診断は、悪性腫瘍を疑う所見はなく、重度、形質細胞、リンパ球性、好酸球性、カタール性胃炎でした。抗炎症治療を早速はじめ、食事の検討を行います。まずは、悪性腫瘍でなく、よかった、よかった!
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痛みの少ない子宮内膜症の手術 [News]
●稟告
14歳 Mix ♀ ラン
「尿を何回もする。食欲にムラがある。」との主訴で来院されました。血液検査では、異常なし。陰部より透明なオリモノと陰部腫大がありました。心臓の雑音は中程度。以前、来院時に心臓の検査をお勧めしていますが来られていません。今回、詳細な超音波検査(腹部、胸部)をお勧めしましたが、鎮静に抵抗感(もし何かあったら・・・・)があるため、予約をキャンセルされました。
●超音波検査
その後、7日間経過しましたが改善の兆しなく、ついに食欲がなくなってしまいました。飼い主さんには依然鎮静の抵抗感があるため、鎮静なしで子宮だけを観察させていただきました。結果は明らかに子宮の異常があることが分かりました。麻酔が心配でしょうがない飼い主さんを説得し、翌日手術をさせていただくことにしました。
麻酔前の鎮静で、胸部レントゲン、胸部超音波検査で心臓の状態を把握してから麻酔に入りました。この映像は、左心室の拡張能力を見ているところです。他に収縮力、逆流、左心房の大きさ、心筋の厚さを観察します。
●腹腔鏡手術
年齢と痛みを加味して腹腔鏡で手術をさせていただくことにしました。通常の腹腔鏡を使用した不妊手術と手技は変わりませんが、卵巣、子宮が大きくなっていると靭帯と卵巣動静脈にかぶさり切断が難しくなります。また、切開創はその大きさに合わたギリギリの追加切開が必要になります。
●子宮摘出
腹腔鏡で手術したため、痛みが少なく当日帰宅できました。
摘出した子宮は、内膜の変性が著しくあるのみで感染はありませんでした。私の経験では、この程度の状態で食欲が全くなくなることはありません。血液検査でも炎症像はありませんでした。果たして、この手術だけで元気になるものかと少し心配になりましたが、3日後には食欲は70%、元気は90%に改善されました。
●乳腺腫瘍同時摘出
5ヶ所の乳腺腫瘍が発見されたので、同時に切除することにしました。ホルモンの影響を受ける乳腺腫瘍の発生予防効果は、初回発情前で不妊手術を行うと99.5%。1回目発情後92%。2回目発情後74%。2.5歳以降は予防効果なし。と言われています。
早期に手術を行えば乳腺腫瘍の抑制され、この度の卵巣、子宮異常につながらず、手術代の負担も少なっていました。
病理検査結果は、悪性と良性でした。いずれも切除範囲は完全で、これで一安心です。
”早期に痛みの少ない腹腔鏡で不妊手術を行い、安心した老後を!”
●抜糸
本日、抜糸を行いました(5mm×2、1.5cm×1の3か所)。すこぶる元気になり、飼い主さんも大喜びでした。飼い主さん曰く「もっと早く麻酔をかければよかった・・・・。」これで、麻酔の抵抗感もずいぶんと和らいだそうです。目出度し、めでたし。
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痛みの少ない不妊手術 [News]
●トイプードル 1歳 ビビ ♀
ある日飼い主さんは、そろそろビビの不妊手術を受けようと思ってお散歩仲間に訊ねました。
「不妊手術はどう?」「う〜ん。3日間ぐらい痛がって歩けなかったし、食事も採れず、見ていて可愛そうだった。」「・・・・。」「我が家のビビは、痛みに弱いし、お転婆だし、もしも暴れて傷が開いたら心配だし・・・・。」
調べてみると、痛みがほとんどなく、傷が小さくなる腹腔鏡手術があることを知りました。
●腹腔鏡手術とは?
お腹にガスを入れて膨らまし、お腹の中で鉗子、メスを使って手術する方法です。通常の麻酔をかけて、各種モニターを装着し、完全滅菌の状態で4台の画面を見ながら、お腹に5mmの穴をあけて、カメラ、鉗子、超音波メスを挿入してお腹の中で手術が行われます。
●手術の利点
@お腹を大きく開けないので、体温が低下するリスクが減ります。体温が低下すると麻酔がさめにくくなります。
A切開創は5mm、3か所なので非常に小さな傷になるため痛みが各段に少なくなります。通常の手術で皮膚切開を小さくすることもできますが、その下の腹筋切開はある程度の距離が必要で、腹腔鏡の様に本当に小さな傷にはなりません。
Bお腹の中で操作するので、腹部臓器を触ることがなく、卵巣を強く引っ張り上げることもないので、手術中に痛みを感じることは全くありません。
C超音波メスを使用するので、血管を切断すると同時にシールされるので、出血はありません。
D手術後にお腹の中の出血確認をカメラ映像で確実に行えるので安全です。
E子宮、卵巣以外に、肝臓、腎臓、膀胱、脾臓、胆嚢、腸管、膵臓、副腎が観察できるので、その他の異常を発見することができます。(以前、慢性肝炎が見つかりました!)
F傷が小さいので、手術後に直ぐに歩け、もし傷が裂けても臓器が飛び出る危険はありません。
●術後
手術3時間後のビビちゃんです。まだ眠そうな目をしています。5時間後には、尻尾をふって、元気に走って帰宅できました。
腹腔鏡不妊手術は、間違いなく動物に優しい手術です。しかし、術者の手術手技と麻酔管理者に熟練を要することが必要です。
当院院長は、腹腔鏡外科手術歴7年、約500例の実績を持ち、手術時間は約15分です。安心してお任せください。