肺水腫と血栓症 [News]
●緊急事態
「数日前から咳がでるので少し気になっていたが、今日は動けなくなった!」と緊急来院されました。心臓の音を聞くと大きな雑音と肺の捻髪音が聞こえます。他の身体検査を素早く行い「心不全からの肺水腫」と診断しました。
先ずは、麻薬を投与。続いて血管に針を留置し、利尿剤を投与し酸素室へ。15分もすると呼吸状態が落ち着きましたが、大きな声で泣き叫ぶ様になりました。
続いて、肺と心臓の状態を観察するために、レントゲン撮影を行いました。予想通り、左心房拡大と肺水腫が発見されました。
●腹大動脈の観察
痛みが強いので、鎮静剤、麻薬を投与し、落ち着かせてから超音波検査を行いました。すると、腹大動脈が分岐する場所に血栓らしきものが見えました。
●カラードップラー
血管にカラーを乗せて確認すると、やはり血栓より尾側は血液が流れていないのが分かりました。早速、痛み止め、血栓溶解剤、血栓防止剤の投与を開始しました。
●左側不全
心臓の超音波検査では、左の弁から著しい逆流が見られました。流入速波形のEは著しく増加し、左房圧の上昇が示唆されました。
注(心臓は4つの部屋があり、それぞれ左心房、左心室、右心房、右心室に分かれています。今回は左心房と左心室の間に位置する左の弁である僧房弁が閉鎖不全に陥っていました。)
●左心房内に血栓!
左の心房を観察すると大きな血栓が見つかりました。現状を解決しても次に控える血栓があり、再び閉塞する可能性が残り心配です。
●2日後
血栓が開通して後足の血圧が回復、痛みも治まりました。今日は、飛んだり走ったりできるようになったそうです。処方薬は、血栓防止2種類、心臓薬3種類となり、種類が多く投与が大変ですが、これで安定してくれることを祈ります。
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猫 根尖部膿瘍 [News]
●おねえちゃん 15歳 ♀ 茶トラ
「突然、右頬が腫れてきた!」と来院されました。口を開けてみると怪しそうな犬歯があります。15歳ですが、入念に血液検査、胸部のレントゲンを撮影して、お年寄りに優しい麻酔を選択しました。
●歯肉に穴
犬歯の側面の歯肉に大きな穴が開いていました。歯の動揺があり、膿の排出も見られます。
●歯科レントゲン
レントゲンを撮影しました。歯の奥に黒く見えるのが感染巣です。感染巣の蓋となっている原因の歯を抜き排液・洗浄を行い、適した抗生剤を選択する必要があります。
●膿の塗抹
歯の奥から採取した膿を検査しました。白血球が球菌を貪食(食す)しているのが分かります。
●反省
歯は、定期的に検査とクリーニング、そして処置を行わなければなりません。歯が原因で髄膜炎、心内膜炎、膿瘍などになれば、命に係わることがあります。15歳と高齢になると麻酔をかけることを躊躇いがちになりますが、しっかりと手術前に検査(身体検査、レントゲン、超音波検査、尿検査)を行い、合格した後であれば、まず心配ありません。
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椎間板ヘルニア [News]
●椎間板ヘルニア
近年、ダックスフンドが流行し、飼育頭数が増えるとともに、椎間板ヘルニアを良く見るようになりました。椎間板ヘルニアとは、背骨と背骨の間にある椎間板(クッション)がその上を走行する脊髄を圧迫するために神経症状(歩行障害、麻痺)を起こす状態を言います。軽度であれば、針、オゾン、レーザーと保存療法(絶対安静)で回復しますが、重度になると手術が必要です。ダックス、シーズー、ペキニーズなどは軟骨異栄養性犬種ですから、椎間板の外(線維輪)から中に存在する物質(髄核)が飛び出して脊髄を圧迫することが多いと言われます。
●MRI横断面
このMRI像で分かるように、写真のほぼ中央部部に親指の様に突出しているのが、ヘルニアを起こしている椎間板物質です。椎間板が圧迫しているタイプ(ハンセン2型)と、椎間板の中に存在する物質が飛び出し圧迫しているタイプ(ハンセン1型)があり、通常後者が激しい症状を呈します。
●MRI従断面
同じく、椎間板からニョキッと飛び出した物質が中央に見れます。その頭にグレーの色で薄く乗っているのが脊髄神経です。物凄く圧迫されているのが分かりますか!?
こうなると症状も重度であることが多く、できるだけ早い施術で、その神経を圧迫している椎間板物質を除去しなければ2度と立てなくなってしまいます。
●予防
何より太らせないことが大切です。しかし、痩せているからと言ってヘルニアにならない訳ではありません。腰を痛がる症状があれば、早めに来院して早期の治療を開始する必要があります。また、手術が必要かどうかの判断を早期に見極める必要があります。